
ウクライナ国旗
ウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所のダム決壊がウクライナ軍の反攻作戦に及ぼす影響に関心が集まっている。ウクライナはロシアによるダム破壊のシナリオは想定済みで影響は限定的だと強調。ただ、ドニエプル川の渡河が困難になることは反攻作戦の選択肢が狭まることを意味し、露軍に一定程度有利に働くとの見方もある。
【写真】水浸しになったウクライナ南部ヘルソン市内で避難する人たち
ヘルソン州は昨年9月、ロシアが一方的に併合を宣言したが、ウクライナ軍が11月、露軍の占拠下にあった州都ヘルソンを含むドニエプル川の西岸を奪還。以降、両国軍は川を挟んで砲撃の応酬を続けてきた。ウクライナは同国軍による東岸への渡河作戦を阻止するため、ロシアがダムを爆破し洪水を起こしたとみる。
ただ、ウクライナ軍のナエフ中将は6日、「露軍がダムを決壊させた場合に備えて検討してきた」とし、「決壊は洪水が起きた地域での攻勢に悪影響を及ぼさない」と説明した。
ウクライナ国立戦略研究所のべレスコフ研究員も、渡河作戦は重大な損失を被る危険が大きく、「反攻計画に含まれていた可能性は低い」と指摘。渡河が困難になっても戦局への影響は限定的だとした。ウクライナメディアが伝えた。
一方、ロシアはダム決壊について、ドニエプル川西岸の防衛部隊を攻撃に転用しようと考えたウクライナが、露軍の渡河を防ぐために行ったと主張している。
米シンクタンク「戦争研究所」は6日、こうしたロシアの主張について「信じがたい。露軍が東岸に配備している戦力は限定的で、ウクライナ軍に(露軍による渡河の)恐れを与える規模ではない」と分析した。
ただ、過去にもウクライナ軍の電撃的な反撃で占領地域を奪還されてきた露軍にとって、ウクライナ軍に渡河を許す可能性が減ったことは有利な要因になる。米メディアによると、元ドイツ国防省高官のランゲ氏は洪水でロシアは東岸の部隊を「別方面に回せる」との見方を示した。
ダムは1950年代に建設され、貯水量18立方キロメートル。露軍が占拠し、これまでも双方がダムへの砲撃などを非難してきた。決壊の要因には人為的な破壊に加え、これまでの損傷による自然崩壊の可能性も指摘されている。