セルフプロデュース公演「PREMIUM SHOW」の会見を行った坂東玉三郎
歌舞伎俳優の坂東玉三郎(73)が5日、東京・南青山の音楽ホール「BAROOM」で、セルフプロデュース公演の会見を行った。歌舞伎界が、市川猿之助(47)が都内の自宅で倒れた状態で見つかった事態で揺れる中、玉三郎は「体力的に歌舞伎座のような大劇場での公演が難しくなり、今後はこのようにお客さまと近い空間で芸術を届ける活動を軸にしていければ」と歌舞伎の本興行から距離を置く意向を示した。
【写真】坂東玉三郎 豪華打ち掛け披露に観客どよめき
当代きっての女形として知られる玉三郎。通常の歌舞伎公演では出演時間の長い大役を務めることが多く、1カ月間ほとんど休みのない稼働が求められる。そんな中、「大きな役で大劇場の1カ月間の一晩を背負うことが体力的に難しくなってきた」と吐露。「そんな時に今回の話を頂き、運命的なものを感じた。これから自分が生きていく道として良いのではないかと思った」と語った。今後は、今回のように小さな劇場などでの公演や、舞台製作などに主軸を移していくという。
この発言に、頭を抱えるのは歌舞伎の本興行を取り仕切る松竹だ。一、二を争う集客力を持つ猿之助が今回の事態で舞台に立てない中で、多くのファンを抱える玉三郎まで離れれば、歌舞伎界が興行的に厳しい状況に陥るのは必至。加えて同じく看板俳優の尾上菊五郎(80)や松本白鸚(80)も本調子と言えず、大役を務めることが難しい状態が続いている。「今後、どのように劇場を埋めればよいのか…」と頭を抱える関係者もいる。歌舞伎界はさらなるピンチに追い込まれることになる。
会見後、本紙記者らに猿之助の件についての考えを聞かれた玉三郎は、立ち止まって何かを語ろうとする様子を見せた。ただ、そのままスタッフに促される形で会場を後にし、何も話すことはなかった。
≪小規模ホールならではの魅力語る≫今回の公演は「PREMIUM SHOW」と題し、9月2~10日に口上と衣装解説、同12~24日にコンサートを行う。現在は選曲の真っ最中で「小さな空間だからこそひっそりと歌えるボサノバのようなナンバーを考えています」と構想を明かした。会場は100席限りの小規模ホール。「この年齢になると、近くから見られてしまうことがデメリット」と語り笑いを誘いつつ、「お客さまとの距離が近いからこそ、ある種の即興性が生まれるのではないか」と期待を口にした。