小泉進次郎防衛相の自衛隊派遣、クマ被害対策で銃器不使用に批判殺到「三毛別事件を教訓に」

秋田県を中心に全国でクマによる人身被害が過去にないほど深刻化する中、小泉進次郎防衛相は2025年10月28日、秋田県知事からの緊急要請を受け、自衛隊を現地に派遣すると発表しました。しかし、自衛隊の活動が銃器による駆除を行わず、後方支援に限定される方針が示されたことで、インターネット上では波紋が広がり、「三毛別事件」の教訓を求める声が上がっています。

深刻化するクマ被害と自衛隊派遣の背景

2025年の全国におけるクマによる死者数はすでに11人に上り、統計開始以来最多を記録しています。特に秋田県では、市街地を含む広範囲で人身被害が54人に達するなど、地方自治体や猟友会のリソースだけでは対応しきれない危機的状況に陥っています。

鈴木健太秋田県知事の緊急要望を受けて、小泉防衛相は即日、東北方面総監部から秋田県庁に連絡員を派遣し、具体的な対応策の迅速な策定を指示しました。小泉氏は自身のX(旧Twitter)でも、「国民の命と平和な暮らしを守り抜くという責務を果たす」ため、「与えられた能力と権限を最大限生かし」対処していくと表明し、事態の深刻さを強調しました。

クマ被害問題に対応する小泉進次郎防衛相クマ被害問題に対応する小泉進次郎防衛相

「銃器不使用」の方針が呼ぶ波紋と批判

自衛隊の派遣決定は、多くの国民に安堵をもたらすかと思われましたが、防衛省が「武器によるクマの駆除は行わず、箱わなの運搬・設置といった後方支援に限定する」という方針を固めたことで、一転して批判の的となりました。

元航空幕僚長の田母神俊雄氏は自身のXで、この銃器不使用の方針に対し強く苦言を呈しています。「それならなぜ自衛隊が派遣されるのか。クマを見つけた時の処置の判断は自衛隊に任せたらよい。いちいち自衛隊の行動を縛るべきでない。バカなことだ」と、自衛隊の能力を最大限に活用すべきだと主張しました。

また、SNS上でも同様の意見が多数見られ、「おいおい、銃器を使わないことをもう決めちゃうなんて…小泉進次郎は三毛別事件のことを知らないのかな」といった声が上がっています。このコメントは、日本史上最悪の獣害事件として知られる「三毛別事件」を想起させ、今回のクマ被害への対応の甘さを指摘するものです。

日本史上最悪の獣害事件「三毛別事件」の教訓

「三毛別事件」とは、1915年(大正4年)に北海道苫前村三毛別(現在の苫前町三渓)で発生した、ヒグマによる連続人身襲撃事件です。冬眠に失敗し飢餓状態に陥った巨大なヒグマが、一週間にわたり開拓集落を断続的に襲撃し、最終的に7人が死亡、3人が重傷を負うという未曾有の惨事となりました。

この事件の悲惨さは、クマが逃げ惑う女性や幼子を容赦なく襲い、殺害した遺体を食い散らした点にあります。特に凄惨なのは、妊婦の腹を食い破り、胎児を引きずり出して死に至らしめたとされる描写で、その地獄絵図は「日本史上最悪の獣害事件」として今も語り継がれ、人々を震え上がらせています。

今回のクマ被害の主要な加害動物はツキノワグマであり、三毛別事件のヒグマとは種類も大きさも異なります。しかし、すでに東北地方を中心に10人以上の死者が出ている現状を鑑みれば、クマとの遭遇が人命に関わる危険性があることに変わりはありません。

法的制約と今後の課題

自衛隊が安易に武器を使用できないという法的なハードルがあるのも事実です。自衛隊法第89条では、警察官職務執行法に準じて武器を使用できるとされていますが、これはあくまでも自己または他者の生命・身体を防衛する場合などに限定されています。今回のクマ駆除において、自衛隊が積極的に銃器を使用することには、現在の法制度では制約が大きいのが現状です。

国民の命と安全を守るために自衛隊が派遣される中、その活動が法律によって限定される現状は、今後の獣害対策における大きな課題と言えるでしょう。自衛隊員が無事に任務を終え、これ以上の人身被害が拡大しないよう、効果的かつ現実的な対策の確立が急務です。


参考文献: