スウェーデン少年ギャングがノルウェーを襲う:北欧の移民政策が日本に突きつける課題

ノルウェーの首都オスロで留学時代の友人と再会した際、街の治安の良さに改めて感銘を受けた。日はすでに暮れ、運河沿いの道は暗闇に包まれていたが、若者や家族連れが安心して散歩を楽しむ姿は、世界でも稀に見る平和な光景である。警察官が銃を常時携行しないことからも、その安全性が窺い知れる。しかし、この平和な印象は、友人から聞かされた衝撃的なニュースによって一変した。

平和なオスロを震撼させた手榴弾事件の真相

穏やかなオスロ北部の住宅街にあるバーで賑わう中、友人が語ったのは、スウェーデンから来た少年ギャングがオスロ中心部で手榴弾による爆発事件を起こしたという信じがたい話だった。少年ギャングが軍用タイプの手榴弾を使用するという事実に耳を疑った。綿密な調査により、2025年9月23日夜に発生したこの爆発事件では、現場から実際に手榴弾が発見され、13歳の少年2人を含む未成年者計3人が拘束されたことが判明した。この事件には、スウェーデンを拠点とする主要な麻薬流通組織の一つであるギャング組織「フォックストロット」(Foxtrot)の関与が強く疑われている。フォックストロットは、銃器や爆発物の違法な輸送・流通、さらには殺人も請け負うとされ、一部ではイランの情報機関との連携も指摘されている。

社会学者の古市憲寿氏。北欧の治安問題と移民政策について考察する社会学者の古市憲寿氏。北欧の治安問題と移民政策について考察する

スウェーデンを蝕む「ティーン・ヒットマン」の実態

近年、スウェーデンでは15歳以下の少年が関与する暗殺事件や爆弾事件が深刻な社会問題となっている。彼らは「ティーン・ヒットマン」と呼ばれ、子どもたちが殺し屋として暗躍している実態があるのだ。ギャング組織は、ソーシャルメディアやオンラインゲームのチャット機能を利用して、刑事責任を問われにくい少年たちをリクルートしているという。時に彼らはゲーム感覚で殺人を犯し、その多くが移民または外国にルーツを持つとされる。この現状をスウェーデン在住の知人に伝えたところ、「私たちの国が申し訳ありません」と謝罪されたという。

スウェーデンの少年犯罪問題を示唆するイラスト。ソーシャルメディアやオンラインゲームを通じてリクルートされる若者の姿スウェーデンの少年犯罪問題を示唆するイラスト。ソーシャルメディアやオンラインゲームを通じてリクルートされる若者の姿

ノルウェーとスウェーデン:異なる移民政策とその結果

同じ北欧諸国でありながら、ノルウェーは比較的移民政策が成功していると評価されている。スウェーデンが平等を重視し、移民の権利を対等に認め、自由な居住を許してきたのに対し、ノルウェーは文化統合と同化を重視する政策を採用してきた。具体的には、移民や難民に対し、ノルウェー語を含む教育を提供するだけでなく、全国各地に分散して送り込む。これにより、スウェーデンのように移民が都市部に集中し、独自のコミュニティーを形成するのを防ぎ、人口減少や過疎化に悩む地方への移住を促すことで、Win-Winの関係を築こうとしている。

平等という観点からはスウェーデン式の政策が理想的と映るかもしれないが、現実にはギャングが跋扈する国家という厳しい現実に直面している。

岐路に立つ日本の移民政策:北欧からの教訓

日本においても、外国人問題、特に移民政策の議論が活発になっている。人口減少が加速する中で、全く外国人の受け入れをしないという選択は現実的に難しい。すでに外国人の流入はなし崩し的に進んでいる。参政党が提唱する「日本人ファースト」といった主張に反発する声も上がる中で、日本はどのような移民政策が最適なのかを真剣に検討すべき時期に来ている。政治的立場を問わず、少年ギャングのような存在を歓迎する人はいないだろう。北欧の経験は、日本が将来の社会を構築する上で貴重な教訓を与えている。

結論

北欧の穏やかな国々でさえ、移民問題とそれに伴う少年犯罪の影が深く忍び寄っている。ノルウェーとスウェーデンの対照的な移民政策の成果は、単なる理想論では解決できない現実の課題を浮き彫りにしている。日本は、人口減少という喫緊の課題に直面し、外国人の受け入れを避けては通れない。この状況下で、いかにして多文化共生を実現しつつ、社会の安全と秩序を維持していくか、北欧からの教訓を深く掘り下げ、真摯な議論を通じて最適な日本の移民政策を構築することが求められている。少年ギャングのような社会問題が根付くことのないよう、先を見据えた政策立案が不可欠である。


参考文献:

  • 古市憲寿(ふるいち・のりとし)著, 「週刊新潮」2025年10月30日号掲載記事
  • Yahoo!ニュース: 「スウェーデン少年ギャングがノルウェーで手榴弾事件」関連報道 (Source link)