ワクチン未接種者隔離の消防で他に3人退職「打たぬならゴーグルを」

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新型コロナウイルスのワクチン接種を巡って退職した警防課や予防課の職員が4階で勤務していた甲賀広域行政組合消防本部=滋賀県甲賀市水口町水口で2023年5月31日午後5時1分、村瀬優子撮影

【全文】消防本部が全職員に出した文書

 問題では、2021年5月、副反応への不安からワクチン接種を辞退した警防課の30代の職員に対し、全職員との接触を制限。更に消防長名で「ワクチン接種拒否者への業務区別」と題する内部文書を出し、職員の執務場所を廊下脇の協議スペースとしていることなどを全職員に周知した。職員は4カ月後に退職した。

 関係者や本部によると、22年8~9月の4回目接種で、通信指令課の再任用の60代男性職員▽予防課の30代男性職員▽湖南中央消防署の20代男性職員――が副反応への懸念から接種しない意向を伝えた。その後、本部の対応への不満などから全員が退職したという。

 通信指令課の職員は、幹部らとワクチン接種について複数回面談した後、同9月末に退職した。職員によると、「打たないのなら、(消防を)辞めないといけないのか」と聞くと、「(職場に)いるのなら、打ってください」などと言われたという。この職員は「接種を受けない職員は辞めざるを得ない状況だった」と訴える。

 予防課の職員は「警防課の職員が辞めて1年たっても、接種を理不尽に強いる組織の体質に失望した」と明かす。幹部からは「消防長は今までのやり方を通したいと思っている」「打たないなら、毎日ゴーグルをするなど他の職員とは違う感染対策を考えてくれ。ワクチンを打てば事は済む」などと言われたという。職員はこの面談の直後に体調を崩して適応障害と診断され、同9月末に退職した。

 本部は22年12月、5回目接種の通知文書で、接種しない職員について「担当課及び所属長から接種するまで継続して必要性を説明し、ゴーグルの着用を義務づける」などと全職員に周知した。4回目以降の接種を受けなかった湖南中央消防署の職員は1人だけゴーグルの着用を求められ、23年3月末に退職した。

 人権問題に詳しい川上詩朗弁護士(東京弁護士会)は文書に「接種するまで説得が続くということは、接種を強制されているとの心境を抱かせる恐れがある。ゴーグル着用の義務付けで未接種者が特定され、差別を生む危険性もある」と指摘する。

 本部の西澤卓也次長は取材に「クラスター(感染者集団)を出さないよう、組織として接種を要請したが、強制はしておらず、退職も求めていない」などと説明。一方で、「警防課の元職員への対応を第三者委員会で再検証する中で、退職した他の職員への対応についても検証してほしいと考えている」と話した。

 ◇元職員ら「閉鎖的で陰湿な職場環境」

 「なぜ味方になってあげられなかったのか。申し訳ない」。2022年に新型コロナのワクチン接種を巡り退職した予防課の男性職員は、21年に業務区別を受けた警防課職員の退職後、自責の念を持ち続けてきた。毎日新聞の取材に「現役職員のためにも組織の体質が変わってほしい」と当時の状況を証言した。

 男性はこの職員の様子について「トイレで泣いたり、『職場に行けない』と電話があり、同僚が迎えに行ったりしていた。見かねて『このままだと辞めますよ』と周囲に言っていた」と振り返る。

 職員が一人で勤務させられた協議スペースは4階の入り口近くで「他にも空いている場所はあるのに、人通りの多い目立つ場所で働かせる必要があるのか」と疑問だった。内部文書には「組織の方針に逆らえばこうなる」という見せしめだと感じた。

 更に本部は職員を新型コロナ患者の移送業務に携わらせた。「感染防止を名目に業務区別しているのに、一番感染の危険がある業務に従事させるのはおかしい」と話す。他の職員からも対応を疑問視する声が聞かれたという。

 この職員が辞め、男性は組織への失望から退職を考えるようになった。自身もワクチンの中長期的な影響には不安があり、22年7月、4回目の接種を受けない意向を上司に伝えた。「個人の意志で決められるべき接種を組織から強いられる嫌悪感は想像を絶するものだった」と話す。

 消防本部の22年度の退職者は男性を含めて8人に上る。本部は「ハラスメントの訴えはない」とするが、複数の職員や元職員が取材に「閉鎖的で陰湿な職場環境に耐えられずに辞めていく職員が多い」と話す。男性は「夢を持って消防の道を志した若手が退職していくのは市民にとっても損失。第三者による全職員へのアンケート調査を実施して、内情を明らかにしてほしい」と訴えた。【村瀬優子】

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