山梨で出た水は「静岡の水」の川勝知事、一転「今後主張しない」…県境までの調査は事実上容認

　リニア中央新幹線の建設を巡り、静岡県の川勝知事は１３日の記者会見で、ＪＲ東海が山梨県内で行うボーリング調査で出る水について、「水は皆のものであり、同時に誰のものでもない」と述べ、一転して「静岡の水」との主張はしない考えを示した。県境までの調査は事実上容認した。県はこれまで、静岡県の水が山梨県側に流出するおそれがあるとして、ＪＲ東海に調査の停止を求め、調査で出る水の由来を専門部会で議論していた。

　県のリニア担当の森貴志副知事らと１３日に面会した山梨県の長崎幸太郎知事は、記者会見で「（調査で出る水が）静岡の水、山梨の水という議論は受け入れがたい」と強調した。これに対し、川勝知事は「水は動いている。どっちのものだという話は向かない」とし、山梨県で出た水が静岡県の水だという主張は「（今後）しない」と明言した。

　調査は、トンネル工事に先立って地質や湧水の状況を確認するために山梨県から静岡県に向けて進めている。県は、県境から山梨県側の約３００メートルでの調査停止をＪＲ東海に文書で要請していたが、一方的な介入に強く反発する山梨県に配慮する姿勢を見せた。

　今回、県が山梨県の主張に耳を傾ける姿勢に大きく舵（かじ）を切った背景には、調査停止要請に対して異論が相次いでいたことがある。

　調査については、県の専門部会の複数の委員が「大量湧水に至ることはなくコントロールできる」「水が出たとしても止められる」との見解を示したほか、静岡市の難波喬司市長は「県は湧水量を過大評価している。県境まで掘っても何の問題もない」と言い切る。

　ＪＲ東海によると、調査は３日時点で県境から４５９メートルの地点に達し、最大湧水量は毎秒０・０００９立方メートル。「水は全くと言っていいほど出ていない」（担当者）という。

　川勝知事は、「水が静岡県から引っ張られるという前提があり、懸念を払拭（ふっしょく）する義務は事業主体にある」との立場を強調し、引き続きＪＲ東海に水が流出した場合の対応を求める考えを示した。県内の調査については、「専門部会の判断に従う」と述べた。