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事件現場の近鉄大和西大寺駅前
安倍晋三元首相が演説中に銃撃され、死亡した事件から8日で1年となった。各地で追悼の行事が行われ、多くの人々が歴代最長政権を築いた宰相の死を悼んだ。だが、献花台が設けられた奈良市の事件現場には、事件を起こした山上徹也被告(42)の凶器を模した手製銃のようなものを持った男が現れ一時騒然。事件後に露呈したさまざまな課題が改めて浮き彫りになった。
安倍氏が凶弾に倒れた近鉄大和西大寺駅前の事件現場付近。発生時刻の午前11時半ごろ、僧侶の読経にあわせ約200人が手を合わせた。毎月8日の月命日に、ここを訪れるという奈良市の自営業の女性(35)は「二度と起こらないことを願う」と祈った。
銃撃事件の発生時刻にほぼ重なる時間帯。市民らが黙とうをささげていた頃、一帯に怒号が飛び交った。1年前に山上被告が凶弾を込めた手製のパイプ銃に見た目を似せた“偽銃”を手にした男らが出現し、現場は一時騒然となった。男が手にした“偽銃”はアルミホイルの芯のようなものを横に2つ並べ、周りを黒いビニールテープで巻いていた。単なるハリボテで危険性はなく大事には至らなかった。
この男は住所、氏名不詳の20代ぐらい。拳銃のような形をしたものをいたずらに振り上げ、献花などの儀式を妨害した疑いで、奈良西署によって軽犯罪法違反(儀式妨害)の疑いで現行犯逮捕された。黙秘しているという。
目撃者によると、男を含む数人のグループが「ノーカルト」と書かれたうちわを掲げるなど抗議集会のような活動を始めたことから警察が警戒していた。
くしくも東京では、安倍氏の追悼集会で昭恵夫人が「主人が戻ってくるわけではないので、私は何とかして主人の死に意味を持たせたいといろいろと考えている」と涙ながらにあいさつ。「怒りや恨みの感情を持つのではなく、主人が亡くなったことで奮起をしていただき、この日本の国のために力を合わせていただくことが主人に対する供養だと思います」と締めくくった。
事件後、ネット上では山上被告を英雄視する風潮もみられ、減刑を求める署名活動が活発化。4月に発生した岸田文雄首相襲撃事件も山上被告の模倣犯との疑いもある。どんな理由があっても、人命を奪うことが正当化されることはない。事件から丸1年。昭恵夫人の切なる訴えとは別の方向へ社会が向かっていることが透けた一日となってしまった。
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