一病息災
有名人に、病気や心身の不調に向き合った経験を聞く「一病息災」。今回は、コメディアンの萩本欽一さん(82)です。
【写真3枚】「コント55号」時代の萩本欽一さんと坂上二郎さん
萩本欽一さん
1966年、お笑いコンビ「コント55号」でデビューし、「なんでそーなるの!」のギャグで一躍、お茶の間の人気者になった。「欽ちゃんのどこまでやるの!」など出演する番組の視聴率の合計が100%を超えて「視聴率100%男」と称された時期もある。
63歳で社会人野球チームの監督になり、73歳で大学に入学。年齢を気にせず生きてきたが、80歳を迎える頃から、体力の衰えを感じるようになった。
つまずいたり、よろけたり。「自分の体、いったいどうなっちゃったの?」と首をひねることが増えた。
2022年7月13日朝、自宅で目覚めて、右手にビリビリとしびれを感じた。あまり気に留めなかったが、トイレに行こうと起き上がり、めまいに襲われた。
「横にドドドーッと揺れた」。体がふらつく中、しびれは肘より上にじわじわ広がってきた。
「まずいぞ。脳梗塞(こうそく)かもしれない」
一大事に気づけたのは、愛煙家だったから。かかりつけの医師から「脳梗塞に気をつけて」と注意を受けていた。脳梗塞は、脳の血管に、血液の塊(血栓)が詰まる病気。喫煙すると血栓ができやすくなり、脳梗塞の発症リスクが高まる。
突然のめまいや、片側の手足のしびれなど症状も知っていた。
駆けつけたマネジャーの運転する車で病院に向かった。
あと1時間、受診が遅れたら薬使えず…医師にやめてと忠告されたこと
萩本欽一さん
駆け込んだ大学病院ですぐ、頭部の磁気共鳴画像(MRI)検査などを受けた。
「萩本さん、軽い脳梗塞だよ。入院、入院」
対応した医師の厳しい表情から、事態の深刻さを理解した。検査画像には、細い血管が詰まった場所が、はっきりとうつっていた。
すぐに、血管を詰まらせた血栓を溶かす点滴治療を受けた。
この治療は、マヒや、認知機能の障害などの後遺症や死亡を減らす効果がある。ただし、投与の対象は、発症して4時間半以内の早期患者に限られる。
手のしびれが起きてから治療を始めるまで4時間ほど。治療の後、医師から、こう言われた。「あと1時間、受診が遅れたら、薬が使えず、危なかった」
入院は7日間。早期に治療できたため、後遺症はなく、退院してすぐ、仕事に復帰できた。
かかりつけの医師からは、再発を防ぐため、禁煙を強く勧められた。長年の習慣を簡単にはやめられないけど、できるだけ本数は減らすようにしている。おかげでたんやせきも出なくなった。血液をさらさらにする抗血栓薬は毎日、欠かさず飲んでいる。
「右腕にしびれが出た後、マネジャーがすぐに来てくれた。早いタイミングで治療ができたおかげだね。ほら、この通り、元気になれたよ」