領土問題とNATO加盟の可能性をめぐるウクライナとの論争:NATO幹部の「発言・即撤回」は戦略か?

NATO幹部が「ウクライナが領土を諦めればNATO加盟もあり得る」と発言 ~翌日に撤回

G7広島サミットでのウクライナのゼレンスキー大統領
【G7広島サミット】記者会見するウクライナのゼレンスキー大統領=2023年5月21日午後7時54分、広島市中区 写真提供:産経新聞社

ウクライナはNATO(北大西洋条約機構)への加盟を望んでおり、NATO幹部が「ウクライナが領土を諦め、その代わりに加盟するという解決策もあり得ると思う」と発言しました。しかし、その発言は翌日に撤回されました。ヨーロッパの国々も一致しているわけではないようですが、一体何が起きているのでしょうか?

私は5月にエストニアで開催された国際会議に参加し、エストニアの国防軍トップやラトビアの首相にインタビューする機会がありました。

ロシアに対して最強硬派のバルト三国とポーランド ~バッファゾーンを経ているドイツやフランスと「ウクライナにどこまで押し返して欲しいか」に温度差

バルト三国とポーランドは、帝政ロシアの時代から何度もロシアに侵略・併合されてきた歴史があります。そのため、彼らはヨーロッパ内でも最もロシアに対して強硬な立場を取っています。

一方、ドイツやフランスはバッファゾーン(緩衝地帯)を経てロシアと向き合っていますが、ロシアに対しても厳しい姿勢を持っています。ただし、「第三次世界大戦になるようなことだけは避けたい」という思いもあります。

バルト三国とポーランドは、「併合されたくない」という強い意思を持っており、ウクライナに対して「どこまで押し返してほしいか」という点で意見が分かれています。

米大統領選も控え、撤回を前提にわざと発言した可能性も ~ある程度のところで「ウクライナに停戦交渉に入って欲しい」という声の地ならし的な発言か

今回の発言は、NATO事務総長の補佐役を長年務めていた人物によるものです。彼はノルウェー出身のスティアン・イェンセン氏です。

しかし、その人物がこのような問題発言をするとは思えません。このように明確な発言を行うということは、ある種の意図や戦略があるのかもしれません。

ウクライナの反転攻勢がうまくいっていないなか、アメリカの大統領選が本格化する11月に向けて、トランプさんなどは「ウクライナ支援は欧州にすべて任せるべきだ」と主張しています。

そのため、一部ではウクライナにある程度のところで「停戦交渉に入ってほしい」という意見も出てくると思われます。そこで、発言を通じて地ならしをする意図もあったのかもしれません。

ソースリンク: 日本ニュース24時間