スリーエスコーポレーション不当解雇訴訟:宇都宮営業所閉鎖と転勤拒否でアルバイト従業員が地位確認求め提訴

株式会社スリーエスコーポレーションの宇都宮営業所で10年以上にわたりアルバイトとして勤務してきた従業員Aさんが、営業所閉鎖とこれに伴う異動拒否を理由とした解雇は不当であるとして、8月20日に東京地方裁判所へ地位確認訴訟を提起しました。同日午後には、原告Aさん、所属する労働組合「日本労働評議会」のスリーエス分会、そして原告代理人らが都内で記者会見を開き、今回の訴訟に至る経緯と訴えを明らかにしました。本件は、非正規雇用労働者の権利保護と企業の対応が問われる注目すべき労働問題として、今後の展開が注目されます。

記者会見で発言する原告代理人の指宿昭一弁護士記者会見で発言する原告代理人の指宿昭一弁護士

スリーエスコーポレーションと労働組合の長きにわたる対立

内装リフォームなどを手掛けるスリーエスコーポレーションは1992年に創業し、京都に本社を構え、全国に複数の拠点を展開しています。同社と労働組合であるスリーエス分会との間には、労働条件を巡る対立の歴史が存在します。

スリーエス分会は2016年に非正規労働者(アルバイト)のみで結成されました。結成当時、同社は形式的には請負契約を結んでいましたが、実態は雇用関係であったため、分会は団体交渉を通じて雇用契約への転換と未払い賃金の支払いを認めさせました。さらに、同社のアルバイト従業員の中には正社員へ技術指導を行うほどの高い専門性を持つ者もいるにもかかわらず、ボーナス支給の有無などにより年収で約200万円もの格差があることが問題視されていました。この賃金格差の是正と正社員登用を求め、2022年にはストライキも実施されました。当時の社長は団体交渉において正社員登用を拒否し、「組合が会社を敵視している」と主張。この対応に対し、今年3月、東京都労働委員会は会社の行為を不当労働行為と認定し、「全部救済」の命令を下しています。

宇都宮営業所閉鎖と不当解雇の経緯

今回の地位確認訴訟の直接の発端は、2023年10月に同社が突如として宇都宮営業所の閉鎖を発表し、勤務していたAさんを含む3人のアルバイト労働者に対し、東京支社への異動を提示したことにあります。

Aさんら3人は、家族が宇都宮で生活しているため転勤が困難であると判断し、会社側の異動提示を拒否しました。Aさん以外の2人の非組合員は、その後勤務の継続を断念し退職に至りました。これに対し、会社側は2024年4月に宇都宮営業所を強制的に閉鎖し、同年5月31日付でAさんを解雇しました。

会見でAさんは、「雇用契約書には転勤は合意の上で行う旨が明確に記載されているにもかかわらず、家族の生活や将来的な親の介護といった個人的な事情への配慮は一切ありませんでした。私はただ、これまでの居場所を守りたかっただけです」と、解雇の不当性と心境を強く訴えました。

不当解雇訴訟の会見で決意を述べる原告Aさん不当解雇訴訟の会見で決意を述べる原告Aさん

訴訟が示す非正規雇用の課題

今回のスリーエスコーポレーションに対する不当解雇訴訟は、日本における非正規雇用労働者が直面する不安定な立場と、企業側の都合による一方的な労働条件変更の是非を問う重要な意味を持っています。特に、雇用契約書に明記された合意事項の尊重、そして労働者の生活実態への配慮の欠如が問題の核心にあります。本件訴訟の行方は、同様の状況に置かれる多くの非正規労働者にとって、今後の労働環境や権利保護を考える上で大きな指針となるでしょう。


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