ポーランド、LTAMDSが統合されたパトリオットシステムの契約に署名

新たなパトリオットシステムがポーランドの防空を革新

ポーランドで開催された防衛機器展示会「MSPO」は、仏Eurosatoryや英DSEIに次ぐ規模として知られています。ポーランド国防相のブラスザック氏は、LTAMDSが統合されたパトリオットシステムの契約に署名しました。これにより、ポーランドの防空は大きな変革を遂げることとなりました。

1,000億ズウォティを超える契約総額に注目

MSPO初日に署名された4つの契約の総額は1,000億ズウォティ(約235億ドル)を超えると報じられています。今年のMSPOには700社以上の企業が参加し、アジア・オセアニア地域からも多くの企業が集まりました。特に日本からはEIZO、Wacom、Fujinon、中村留精密工業株式会社、キタムラ機械、三菱電機、京セラの7社が参加しました。

出典:RTX LTAMDS
出典:RTX LTAMDS

ポーランドは、追加調達されたパトリオットシステム、Naval Strike Missile(NSM)の導入、Pilica(ピリカ)の契約、そしてFlyEyeの供給に関する契約を発表し、大きな注目を集めました。現地メディアはこれを「ポーランドの防空における革命」という形容で報じています。

出典:Mariusz Błaszczak Pilica
出典:Mariusz Błaszczak Pilica

LTAMDSとPAC-3MSEで構成されたパトリオットシステムの導入

ポーランドはすでにパトリオットシステム(PAC-3構成/AN/MPQ-65)を2セット取得しており、次世代の統合防空向けの指揮統制システムであるIBCSも導入済みです。IBCSには、ピリカシステム(ZU-23-2とGROM/Piorunを搭載したSHORADにCAMMを統合した低空域を中距離でカバーする国産の防空システム)が統合され、さらにF-35Aも統合される予定です。これにより、ポーランドは「防空における革命」とも言える非常に近代的で効率的な防空システムを構築することができます。

出典:Northrop Grumman IBCS
出典:Northrop Grumman IBCS

NSMの追加取得とFlyEyeの供給に関する契約

NSMに関しては、ポーランド海軍が追加取得を交渉していることが報じられていました。しかし、ブラスザック国防相は「2個部隊分のミサイルを発注した」と発表し、ポーランド国防省も「指揮車輌、ランチャー車輌、数百発のNSMが含まれるコングスベルグとの契約額は80億ズウォティ(約18.7億ドル)」と明らかにしました。この契約は、コングスベルグにとっても歴史上最大規模の契約となったため、大きな注目を浴びています。

FlyEyeに関しては、ポーランドはUAVや徘徊型弾薬の開発・製造や輸出が盛んな国であり、WB Groupが開発した「FlyEye」はISR向けの小型UAVです。

FlyEyeのデモンストレーション
FlyEyeのデモンストレーション

FlyEyeは国内で開発されたため、海外からの制約はありません。また、GPSに依存せずに慣性航法装置による飛行や実証済みの無線リンク、AIによる脅威の検出と判定を行うことができます。さらに、射出や回収用の装置も不要であり、リチウムイオン電池による電気推進を採用しているため、滞空時間は2.5時間とやや短いですが、ウクライナ軍からの評価は非常に高いです。

ポーランド国防省とWB Groupは、「2035年までにFlyEyeを約1,700機調達する」という枠組みで契約を締結しました。なお、1,700機という数字には、2010年からの調達分も含まれているため、新たな数百機の調達が確定したと報じられています。

ドゥダ大統領とブラスザック国防相
出典:Ministerstwo Obrony Narodowej 韓国ブースを訪れたドゥダ大統領とブラスザック国防相

以上がMSPO初日に発表された内容です。その他にも、ポーランド企業と韓国企業の間で多くの契約が発表され、MSPOでは韓国ブースも大きな注目を集めました。

ポーランドは「韓国と共同で韓国製装備品のデモンストレーションを(ベラルーシ国境に近い演習場で)9月に行う」とも発表しており、K2やK9を装備した部隊による軍事演習が行われる予定です。詳細についてはまだ明らかにされていません。

ウクライナ侵攻によって統合防空の重要性が高まり、IBCSには欧州8ヶ国が関心を寄せています。また、ポーランドがCAMMを発注し、英国が19億ポンドの契約を獲得するなど、さまざまな進展がみられます。さらに、ポーランドは米陸軍からAH-64Eを8機取得予定であり、NSMの大量調達も進行中です。ポーランドはまた、アメリカ陸軍が開発した次世代防空レーダー「LTAMDS」の調達も行っています。さらに、UAV開発が盛んなポーランドでは、国産のカミカゼドーロンの導入も進んでいます。

【参考記事】

  • ウクライナ侵攻で統合防空の重要性が高まる、IBCSに欧州8ヶ国が関心
  • ポーランドがCAMMを発注、前例のない技術移転で英国が19億ポンドの契約を獲得
  • ポーランドが米陸軍からAH-64Eを8機取得、NSMの大量調達も進行中
  • ポーランド、米陸軍が開発した次世代防空レーダー「LTAMDS」を調達
  • UAV開発が盛んなポーランド、1,000セットも導入した国産カミカゼドーロンの実力

【引用元】
※アイキャッチ画像の出典:Ministerstwo Obrony Narodowej

ソースリンク: 日本ニュース24時間