米陸軍、SEPv4の中止とM1E3の開発を発表 初期作戦能力の獲得は2030年代初頭

米陸軍が「エイブラムスのSEPv4開発を中止して“より積極的なアップグレード=M1E3”を開発する」と発表しました。この新しいエイブラムスは、SEPv4の特徴を取り入れつつ、「モジュラー式のオープンアーキテクチャ」を採用し、2030年代初頭に初期作戦能力を獲得する予定です。

エイブラムスの後継車輌に関しては要求要件が未定です。また、ジェネラル・ダイナミクスが提案した「AbramsX」も米陸軍のプログラムではなく、同社のデモンストレーターに過ぎません。しかし、米陸軍は「SEPv4の開発中止」と「より積極的なアップグレードの開発」を発表し、注目を集めています。

米陸軍のジェフリー・ノーマン准将は、「最近の戦争を研究する過程で『将来の戦場が戦車に新たな課題を突きつけている』と理解しており、エイブラムスの機動性と生存性を最適化し、将来の戦場でも機能できるようにしなければならない。しかし、エイブラムスは重量を増やすことなく能力を強化するのが難しく、兵站への負担も削減しなければなりません。ウクライナでの戦争は兵士の包括的な保護の必要性も浮き彫りにした」と述べています。

エイブラムスX
出典:Abovfold/CC BY 4.0

「E」という名称は「簡易な修正よりも重要な技術的変更」を意味し、M1E3はSEPv4の特徴を取り入れつつ、「モジュラー式のオープンアーキテクチャ」を採用する計画です。これに成功すれば、迅速な技術的アップグレードが少ないリソースで可能になり、将来的には「より生存性の高い軽量戦車の設計ができるようになる」と述べられています。

M1A2 SEPV3
出典:U.S. Army photo by Sgt. Calab Franklin M1A2 SEPV3

エイブラムスへの能力追加は、重量増による機動性の低下と兵站の負担増が懸念されます。初期重量が54トンだったSEPv3では66.8トンに到達しました。GDLSは「SEPv4で追加される新技術は重量をさらに押し上げる」と言及しています。しかし、ウクライナでの教訓から戦車の保護能力をさらに高める必要があることが判明し、米陸軍は能力を継ぎ足すのではなく、抜本的な改良を行うためにSEPv4ではなくM1E3の開発を決断したのでしょう。

M1A2 SEPV3
出典:U.S. Army Photo by Spc. Jacob Nunnenkamp M1A2 SEPV3

M1E3には2040年以降の拡張性の確保する改良要素も盛り込まれており、初期作戦能力の獲得は2030年代初頭を予定しています。米陸軍は「M1E3の生産が始まるまでSEPv3の生産を縮小する」と述べており、M1E3の運用期間は最低でも15年以上になる見込みです。

つまり、「既存のインフラを完全に捨てる新設計の戦車開発は先送りされる=スペアパーツの入手性に直結する生産ラインが今後何十年も維持される」という意味で、エイブラムを運用する同盟国や新たに導入する同盟国にとっては歓迎すべき決定なのかもしれません。

【追記】ブラッドレーの後継車輌は戦闘重量が40トン~50トンと言われており、66.8トンのSEPv3生産を縮小するため、M1E3の重量は50トン後半から60トン前半の間になると予想されています。

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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army Photo by Spc. Jacob Nunnenkamp

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