米軍がDark Eagle試射に失敗、年内の極超音速兵器配備に暗雲

米国における極超音速兵器の開発は、困難な道のりを歩んでいます。空軍のARRW(AGM-183A)は試射に失敗し、その後も陸軍と海軍が共同で開発しているDark Eagleも連続して試射に失敗しています。このため、米国内では「年内のDark Eagle実戦配備は怪しくなってきた」との報道が広まっています。

陸海軍の苦境、ARRWと同じく

米国はロシアや中国に比べて、ブースト・グライド・ビークル(HGV)搭載の極超音速兵器の開発で遅れをとっています。この開発のギャップを埋めるため、米空軍はARRWの実用化を目指してデジタルエンジニアリングを導入しました。当時のローパー空軍次官補は、「従来のプロセスでは2027年までに初期作戦能力を獲得できるが、デジタルエンジニアリングを採用すればわずか4年で実戦配備できる」と自信を示していました。しかし、ARRWの試射は全て失敗し、性能確認ができない状況となってしまいました。

出典:ロッキード・マーティン AGM-183A ARRW
出典:ロッキード・マーティン AGM-183A ARRW

ARRWの試射で希望が見えてきた2022年5月と12月の成功も、2023年3月の失敗で打ち砕かれました。ケンドール空軍長官は、今後2回の試射結果を元にARRWプログラムの継続を検討することになるだろうと述べました。しかし、ハンター空軍次官補は下院軍事委員会での報告書で、「ARRWの調達計画は現時点ではない」と明言しており、空軍はARRWの開発を見送ることを決定しました。

Dark Eagleも実用化が危ぶまれる

一方、陸軍と海軍はDark Eagleという極超音速兵器の開発を進めています。米陸軍は既にDark Eagleランチャーのプロトタイプを受け取り、運用部隊の創設も完了しました。また、米海軍もDark EagleをIntermediate-Range Conventional Prompt Strike(IRCPS)としてズムウォルト級駆逐艦やバージニア級原潜に採用する予定です。しかし、Dark Eagleの試射も上手くいっていません。昨年のIRCPSの試射では飛行中の異常でデータの一部が失われ、今年3月の試射は技術的な問題(バッテリーの不具合)で中止されました。さらに、9月の試射も直前で中止となり、「年内のDark Eagle実戦配備は怪しくなってきた」との報道が出ています。

出典:U.S. Army Dark Eagle
出典:U.S. Army Dark Eagle

米軍の負け戦に警鐘

極超音速兵器の開発競争では、米国が中国に負けているとの声もあります。ジョン・ハイテン統合参謀本部副議長は、過去5年間に米軍がテストを9回しか実施していない一方、中国は数百回のテストを実施していると指摘しました。また、米政府説明責任局も、国防総省が従来の兵器開発プロセスをバイパスし、高い開発スケジュールを設定していることが問題であると指摘しています。

米軍全体は、極超音速兵器の開発において早く問題を解決したいと焦っています。もし開発体制に問題があるのであれば、ARRWもDark Eagleも同じくロッキード・マーティンが開発しているため、根本的な問題は共通しているのかもしれません。

ソースリンク: 日本ニュース24時間