中国経済をけん引している不動産業界が、マンションの建設中断や大手企業の経営危機に直面しています。そんな中で、「不動産バブル」崩壊の憂いもささやかれています。今回は、中国特有の住宅事情と日本への影響について、講談社『現代ビジネス』編集次長の近藤大介氏が解説します。
約15年で価格7倍!未完成の住宅に住む人も
中国では、マンションの建設中断が相次いでいます。たとえば、天津市では、世界一の高さを誇る予定の117階建てビルが着工から15年たっても未完成のままです。中国の住宅開発は独特で、土地は国有であり、地方政府が不動産企業に使用権を与え、その企業は使用料を支払います。不動産企業は巨額の借り入れで開発を進めますが、建物が完成する前に売却し、得た資金を再投資してさらなる開発を行うという「自転車操業」が常態化していました。
Q.個人や企業は土地を借りるだけで所有はできないのですか?
(講談社『現代ビジネス』編集次長 近藤大介氏)
「そうです。日本でいう借地権付きマンションのようなイメージです。70年間の使用権を買うということです。
Q.完成前に売却してその資金でさらに開発という自転車操業が中国のやり方なのでしょうか?
(近藤氏)
「言ってみれば中国経済自体が自転車操業のようなものですが、特に不動産業はそうです。私も北京に駐在していた頃、よくモデルルームを見に行きましたが、(客は)豪華なピカピカのモデルルームでマンションの完成模型などを見て、すぐ買ってしまいます」
不動産の価格は約7倍に
中国では、不動産が投機の対象となり、「住宅価格の値下がりはない」という期待から熱烈に購入され続けました。その結果、不動産バブルが起きました。2006年から2020年までの間に、住宅価格は約7倍になりました。北京や上海のマンションは50〜60㎡の物件が多く、平均価格は約6000万円にもなると言われています。
未完成状態のマンションに住む人も
中国では、特有の住宅売買事情があります。購入者は、マンションの建設が始まる前に開発業者と契約し、建築中もローンの支払いを開始します。たとえ工事が中断された場合でも、法的にはローンの支払いが続きます。そのため、建設が中断された未完成のマンションに住む人も出てきています。陝西省では、2011年に引き渡し予定のマンションがまだ完成しておらず、約20世帯がコンクリートの上にベッドを置いたり、太陽光発電で電気をまかなったりして生活しています。また、山東省の放置されたマンションでは、薪で調理したり、地下室から水をくんだりする様子がSNSで紹介されています。取材を予定していた人物は地元警察から「出頭するよう命じられた」とのことです。
Q.中国の場合、バックに政府があるから安心だと思っていたのですが…
(近藤氏)
「ローンを借りる銀行がほとんど国有企業です。その国有企業が保証した不動産会社が『全国で300万戸の住宅をつくっています』などと宣伝していましたので、信用してどんどん買っていました。それは不動産の価格が常に右肩上がりになって行くという前提があってのビジネスモデルです」
この記事の出典元:日本ニュース24時間