米陸軍のDark Eagle、試射失敗で実戦配備を会計年度内から年内に変更

米陸軍の極超音速兵器「Dark Eagle(ダークイーグル)」の実戦配備が、試射に失敗したために会計年度内から年内に変更されることが明らかになりました。陸軍のブッシュ次官補は、「会計年度内の実戦配備は困難になった」と述べながらも、追加テストを行うことで年内の配備を目指す考えを示しました。

陸軍の調達責任者は主要テストのデータがないままHGVの製造に深入りしてはならないと警告

米国は、ロシアや中国に比べてブースト・グライド・ビークル(HGV)搭載の極超音速兵器開発で遅れをとっています。当時のローパー空軍次官補は、デジタルエンジニアリング採用を主導した上で、「従来のプロセスで開発すると初期作戦能力の獲得は2027年となるが、デジタルエンジニアリングを採用すればわずか4年で実戦配備できる」と大胆な発言をしていました。しかし、量産移行に必要な試射がすべて失敗し、性能確認ができないという問題に直面しています。

出典:ロッキード・マーティン AGM-183A ARRW

2022年の試射成功を受けて、量産移行への希望が見え始めていましたが、2023年3月の試射が再び失敗しました。ケンドール空軍長官は、「あと2回の試射結果を元に、2025会計年度予算でARRWプログラムを継続するかどうかを決めることになるだろう」と述べ、ARRWの開発中止も考えられると示唆しました。しかし、ハンター空軍次官補は報告書の中で「プロトタイプのテストが終了しても、ARRWの調達予定は現時点ではない」と表明し、実質的に「問題だらけのARRW」を見捨てた形となりました。

極超音速兵器「Dark Eagle」とは?

米陸軍と米海軍は、極超音速兵器「Dark Eagle(ダークイーグル)」の開発を進めています。米陸軍は既にDark Eagleランチャーのプロトタイプを受け取り、運用部隊を創設済みです。一方、米海軍は「Intermediate-Range Conventional Prompt Strike(IRCPS)」としてDark Eagleをズムウォルト級駆逐艦やバージニア級原潜に採用予定です。実際、ズムウォルト級駆逐艦へのDark Eagleの挿入に向けた改修工事も開始されています。しかし、こちらも実用化が不透明となってきました。

出典:U.S. Indo-Pacific Command

昨年のIRCPS試射では飛行中の異常によりデータの一部が収集できず、今年3月のDark Eagle試射もバッテリーの不具合で中止されました。また、予定されていた9月6日の試射も直前で中止となり、「年内のDark Eagle実戦配備は怪しくなってきた」と報じられていました。これに対し、陸軍のブッシュ次官補は、9月の試射は「開発段階」ではなく「運用能力の実証」に近いものであり、会計年度内の実戦配備は困難になったと述べました。

さらに、ブッシュ次官補は「Dark Eagleを2023年末までに実戦配備するために、追加テストの実施を検討中」とも述べています。米ディフェンスメディアは、「会計年度内の配備は達成できない見込みだが、陸軍は年末までにDark Eagleの提供を目指している」と報じています。しかし、ブッシュ次官補は「Dark Eagleが設計通りに機能し、兵士の安全に確信が持てるまで実戦投入しない」とも述べており、十分な検証が行われることが重要視されています。

出典:U.S. Army Dark Eagle

なお、陸軍の調達責任者であるラッシュ中将は、「少しでも早くDark Eagleを手に入れるために、陸軍はテストと製造を同時に進めています。ただし、主要テストのデータがないままHGVの製造に深入りしてはならない」と警告しています。

以上が、米陸軍のDark Eagleの試射失敗により実戦配備が変更されることについての最新情報です。

※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin

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