白熱するフィリピンの潜水艦導入、韓国がKSS-IIIベースの提案を行う

フィリピン海軍の潜水艦導入は、フランス、スペイン、そして韓国との競争によって白熱化しています。売り込みでは韓国のハンファ・オーシャンが209/1400の派生型ではなく、「KSS-IIIベースの設計案」をフィリピンに提案しました。この3カ国は、潜水艦にAIP機関を搭載した提案で競い合っています。

フランス、スペイン、韓国の提案がAIP機関搭載の潜水艦で競合

フィリピン国防省のホセ・ファウスティーノ長官(現在は退任)は、昨年10月に「マルコス大統領の任期中に調達すべき装備リストには、潜水艦2隻が含まれています。このリストには大統領の承認が必要であり、最優先事項となります」と述べました。このリストは国軍の近代化プログラムの第3フェーズに関するものであり、ファウスティーノ長官は「既にフランス、韓国、日本などからオファーを受け取っている」と明らかにしていました。こうした状況から、フィリピンの潜水艦調達に関する戦いが白熱してきています。

Brazilian Navy/CC BY-SA 4.0 ブラジル海軍のスコルペヌ型潜水艦
出典:Brazilian Navy/CC BY-SA 4.0 ブラジル海軍のスコルペヌ型潜水艦

フィリピン国防省は、通常動力型の潜水艦2隻(追加で1隻のオプションも考慮)を調達する予定です。そして、潜水艦部隊の創設、潜水艦を運用するための基地の整備、技術移転などを含む包括的な支援が求められています。フランスのNaval Groupはスコルペヌ型潜水艦を提案し、「スービック湾の再開発地区に潜水艦のメンテナンスや訓練センターを建設し、フィリピン海軍の自主的な潜水艦運用体制を確立する。さらに、フィリピン企業が潜水艦のサプライチェーンに参加できるよう尽力する」と発表しました。

スペインのNavantiaもS-80Plusを提案し、フィリピンのレイテ島西海岸のオルモックに潜水艦基地を建設し、フィリピン人による潜水艦のメンテナンス体制を支援するとしています。これによりオルモックでは雇用の創出が期待されます。しかし、ジェーンズによるとハンファ・オーシャンは19日に「フィリピン海軍の要求要件に適合するため、新たな提案を行った」と伝えています。

NAVANTIA S-80Plus
出典:NAVANTIA S-80Plus

ハンファ・オーシャンは先行してDSME 1400PN(209/1400の派生型)を提案していましたが、新たな提案ではKSS-IIIベースの「KSS-IIIPN(排水量2,800トン、全長77m、全幅9.7m)」が採用されました。この設計案はオリジナルのKSS-IIIよりも小型化されていますが、ハンファ・オーシャンは「KSS-IIIPNは最新の推進システムとリチウムイオン電池を搭載しており、フィリピンの主権と海洋権益を守るための防衛能力を強化できる」と述べています。

フランス、スペイン、韓国の提案とともに、インド海軍の潜水艦入札にも新たな挑戦者としてドイツ、韓国、スペインが集まっています。さらに、ポーランドも潜水艦の調達計画を発表し、欧州とアジアから11社が手を挙げています。通常動力型潜水艦に関する需要は30隻以上であり、フランス、ドイツ、韓国などが積極的に売り込みを行っています。

방위사업청 KSS-III BatchI
出典:방위사업청 KSS-III BatchI

通常動力型潜水艦の鉛電池からリチウムイオン電池への変更動きが各国で加速しています。ただし、海中航行の動力源としてリチウムイオン電池のみを採用しているのは日本だけです。一般的にはAIP機関とリチウムイオン電池の組み合わせが主流です。したがって、もし日本がフィリピンに提案するなら、エジプトがAIP機関搭載のそうりゅう型とスコルペヌ型を比較検討しているように、「世界の主流に合わせたそうりゅう型ベースの設計」または「世界で類を見ないたいげい型ベースの設計」という2つの選択肢が考えられます。中古のおやしお型潜水艦では、スコルペヌ型、S-80Plus、KSS-IIIPNの先進性に対抗することはできません。

これにより、フランス、スペイン、韓国の提案はAIP機関搭載の潜水艦で競合し、インドのプロジェクト75-Iやポーランドのオルカプログラムと同様の顔ぶれとなりました。

海上自衛隊 うんりゅう
出典:海上自衛隊 うんりゅう

ちなみに、日本の提案に関する情報は現時点では確認できていません。また、日本がフィリピンにオファーを送るかどうかすらも不明です。しかし、海外の潜在的な顧客が関心を示し、検討を開始した場合、日本の大型防衛装備品は潜水艦に限らず、非常に競争力を持っています。

日本の防衛装備品の輸出には課題がある

自民党は防衛装備品の輸出を促進し、防衛産業を強化するために制度の見直しを行おうとしています。しかし、輸出を成功させるためには「スペックだけではなく、ビジネスとして成立させる方法」について議論する必要があります。現在のところ、日本の防衛装備品が売れるかどうかは謎です。

日本は他の多くの武器輸出国と同様、第三国の安全保障を担保する軍事力や戦略を持っていません。そのため、米国のように武器輸出を外交戦略として活用することは不可能です。日本が防衛装備品を海外市場で受注するためには、相手国との協力に重点を置いた包括的な輸出戦略が必要です。技術移転や現地生産を通じて、装備品のエコシステムを充実させ、さらなる輸出拡大につなげる必要があります。また、オフセットや技術移転、現地生産に関する経験も重要です。

日本の防衛装備品はスペック的には海外市場で売れる可能性がありますが、政府による政治的な後押し、武器輸出を外交戦略に活用する意思、技術や機密を共有する枠組みやコントロールする方法、装備品のビジネスプランや将来性を担保する計画、当該国との防衛産業協力、海外進出に対する積極性、オフセット、技術移転、現地生産に関する経験など、「輸出を左右する他の要素」が不足しています。以上の点をカバーする取り組みも進めるべきです。

このような課題を克服しなければ、日本の防衛装備品が競争の激しい海外市場で受注を確保することは難しいでしょう。

※アイキャッチ画像の出典:ネット上に投稿された動画のスクリーンショット

Source: 日本ニュース24時間