住民グループの反対と市の説明 豊橋市の新アリーナ計画

住民グループの反対と市の説明

豊橋市中心部に計画されている豊橋公園の新アリーナについて、反対する住民グループが計画の賛否を問う住民投票条例の制定を目指して署名集めを始めました。では、住民グループは何を問題にしているのでしょうか? 一方、市はどのように説明しているのでしょうか?

新アリーナ計画の経緯

豊橋市の新アリーナ計画は、かなりの曲折を経てきました。当初は、前市長の佐原光一氏が推進していた計画でしたが、2020年11月の市長選で現市長の浅井由崇氏が選出され、「白紙に戻す」と表明しました。しかし、昨年5月に市は豊橋公園内を新アリーナの建設候補地として選んだことを発表しました。その理由としては、交通の便などが挙げられていました。

昨年11月、駐車場や交通アクセスなどに問題があるとして同じ住民グループが署名活動を開始し、住民投票条例の制定を目指しました。署名活動を経て、今年2月に直接請求を行いましたが、市長は「制定する意義は見いだし難いと考えている」という意見をつけて条例案を提出し、市議会は議案を否決したため、住民投票は実施されませんでした。

修正案の明らかになった新アリーナ計画

その後、市は5月末に豊橋公園にある豊橋球場を豊橋総合スポーツ公園の隣接地に移し、球場の跡地に新アリーナを整備する修正案を明らかにしました。市は、かつてアリーナを造る予定だった豊橋公園内の別の場所は朝倉川の氾濫想定区域に含まれていたため、現在の場所を選んだと説明しています。

さらに、新たな問題も浮上しました。豊橋総合スポーツ公園の隣接地は南海トラフ地震が起きた場合には津波の恐れがあり、液状化も想定される場所です。しかし、市は7月の記者会見で、球場を盛り土の上に整備し、球場自体や周辺の公共施設を津波避難ビルに指定する対策案を明らかにしました。

住民の反対と市の説明

反対する住民の一人である宮入興一さんは、新アリーナ問題シンポジウムで、「野球場から一番近い総合体育館までは直線距離で1キロ程度です。走って逃げることができる人もいるかもしれませんが、多くの人たちは野球場の外へはなかなか出られない」と指摘しています。また、佐藤清純さんは「市民の安全や命を守ることが行政の基本です。そこを逸脱することがおかしい」と訴えています。

一方、市の多目的屋内施設整備推進室の大林均世室長は、「津波が来る可能性がある球場の移設先には盛り土をして避難場所としても整備していく」と説明しています。市議会で過半数を占める自民党市議団の坂柳泰光団長も計画を容認し、「行政側がしっかりと考え、市民に理解してもらう場をつくっていったらどうか」と述べています。

市は10月中にも新アリーナと豊橋公園東側を整備する事業者の公募を始める予定です。市長の浅井氏は、「安心・安全を第一に考え、事業を進めていく」と話しています。

住民の反対と市の説明には相違がありますが、これからも丁寧な議論が重要です。公共施設の整備には、ステークホルダーの意見を聞きながら合意形成をする必要があると、名古屋大学の福和伸夫名誉教授(地震工学)は指摘しています。

豊橋市の新アリーナ計画には様々な意見がありますが、これからも市民の安全と利便性を重視した計画が進められることを期待しましょう。

ソースリンク:日本ニュース24時間