海自幹部、セクハラ被害者に加害者との面会強要 うつ病退職の原因に

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自衛隊で働く20代の女性自衛官が、セクハラ被害に遭い、その後うつ病と診断されて退職したことが関係者の取材で明らかになりました。女性は上司によって、加害者である男性自衛官との面会を強要されました。面会の場で男性の謝罪を聞かされた女性はショックを受け、出勤できなくなってしまいました。このような被害者への対応は、専門家からも問題視されるセカンドハームとなります。

セクハラ被害の裏で広がる問題

自衛隊では昨年、陸上自衛隊での性加害事件が発覚し、政府は厳正な対策をとる姿勢を示しました。その中で、自衛隊全体でハラスメントの実態を調査する「特別防衛監察」が行われました。今回の問題は、その調査の最中に起きたものであり、女性は「上層部の意識は現場には届いていないと絶望した」と語っています。

問題があったのは、海上自衛隊の西日本の部署です。女性からの被害内容や取材によると、女性は昨夏以降、先輩男性から繰り返し食事に誘われたり、プライベートの性的なことを聞かれたりしていました。さらに、休憩所で胸や足を触られたり、背後から抱きつかれたりするという被害もありました。女性は部署の監察に被害を訴えただけでなく、先輩女性にも被害を伝えました。

面会強要と退職

昨年12月21日、女性は部署のナンバー2である男性1等海佐から面談室に呼ばれ、加害男性の謝罪を直接聞くよう求められました。女性は泣きながら「しゃべりたくない」と拒否しましたが、ナンバー2は「謝罪はいらないってことでいい?」「またこういう機会を作らなくちゃいけないよ」と言って面会を促しました。

面談室で加害男性が謝罪し、責任を取って退職する意向を示すと、ナンバー2は「一存で決めちゃだめ、家族持ってんだから」「落ち込まず」と励ました。女性はショックを受け、翌日から出勤できなくなり、今年3月に「セクハラとパワハラによる心身疲労」を理由に退職しました。

退職直前、女性の所属部署のトップは女性に対し、面会の強要は「一番やってはいけないこと」「ナンバー2を厳しく処分する」と伝えたそうです。

防衛省の対応と今後の展開

防衛省海上幕僚監部によると、現在調査が進められており、加害男性と面会を求めたナンバー2に対して処分が検討されています。海上幕広報室は「ハラスメントを一切許容しない組織環境を構築するため、関連規則に基づき厳正に対処する」とコメントしています。

政府は昨年からハラスメントに対する厳正な取り組みを進めており、「ハラスメントは自衛隊の精強性を揺るがす決して許されない行為」として、防衛政策の文書にも明記しています。

セクハラ被害者が二次的な被害を受けるというこの問題について、清泉女学院大学の岡本かおり教授(臨床心理学)は、「組織は被害者の気持ちを確認しながら対応する必要があり、反省し改善すべきだ」と述べています。

【原文】 朝日新聞社