ザルジニー総司令官が反攻作戦の評価に言及、私が間違っていた

ウクライナ軍が始めた「待望の反攻作戦」が、わずか5ヶ月でわずか17kmしか進まなかったことが明らかになりました。この結果についてザルジニー総司令官はThe Economist紙のインタビューで「私が間違っていた」と述べ、反攻作戦が期待を裏切って膠着状態に陥っていることを認めました。

1日に数メートルしか前進できなくても攻撃を続けて戦場の主導権を握り続けるしかない

反攻作戦に転じることで「ロシアが戦争で勝利を収めることは出来ない」と証明し、プーチン大統領を交渉の場に引きずり出すことができるかもしれないと、西側諸国は期待していました。しかし、ザルジニー総司令官も「ロシア軍を消耗させればプーチンを止められる」と考えていたものの、反攻作戦の推移によってこの期待は裏切られることになりました。

ザルジニー総司令官は、「ロシアは少なくとも15万人もの戦死者を出しています。これほどの犠牲者が出れば一般的な国は戦争を止めているでしょう。しかし、プーチンが想定している消耗戦の規模は数千万人を失った世界大戦レベルでした」と述べ、ロシア軍が覚悟している消耗戦の規模を見誤ったことを示唆しました。

さらに、反攻作戦のタイムスケジュールについても言及しています。「我々はロシア軍の防衛ラインを1日30kmのスピードで移動できると考え、4ヶ月間もあればクリミアに到達し、クリミアで戦い、クリミアから戻って来れると思っていました」と明かし、反攻作戦に先んじて開始されたバフムートでの反撃についても「我々の部隊は敵の地雷原に直面し、西側が提供してくれた装備もロシア軍の大砲と無人機によって打ちのめされた」と指摘しています。これは南部でも同様のことが起きたことを示唆している興味深いコメントです。

ザルジニー総司令官は、ザポリージャや南ドネツクでの攻勢が早い段階で行き詰まるのを目の当たりしました。彼はまず「指揮官に問題があるのではないか」と考えて何人かの交代を試みましたが、改善効果は見られませんでした。次に「兵士が任務に合っていないのではないか」と考え、いくつかの旅団で兵士を移動させましたが、効果はありませんでした。最終的には司令部の部下に士官学校時代の教本を持ってこさせ、戦況に気づくようにしました。

要するに、ザルジニー総司令官は反攻作戦が上手くいくと信じていました。この計画を支持していた欧米諸国も「ウクライナは上手くやるだろう」と考えていました。しかし、5ヶ月間でわずか17kmしか前進できなかったことは「当初の期待を裏切るものだった」と言っても過言ではありません。

ザルジニー総司令官は「最近引き渡しが始まった長距離攻撃兵器はハルキウやヘルソンでの反撃時に最も必要とされていたものだ。来年に引き渡し予定のF-16もロシアが防空能力を向上させたため、あまり役に立たないだろう。この戦争は旧世代の武器システムで勝利できないと理解することが重要で、現状を打破するには中国が発明した火薬のような新技術が必要だ」と述べ、何らかの革新的なブレークスルーがやってくるまで「1日に数メートルしか前進できなくても攻撃を続けて戦場の主導権を握り続けるしかない」と主張しています。

ただし、ザルジニー総司令官は「正直に言おう。ロシアは封建的な国家で最も安い資源は人間の命だ。逆に我々にとって最も高価なのは国民の命だ。戦いが長引けば長引くほど戦場に動員できる人的資源(兵士数)の維持が困難になる。我々は解決策を探さなければなりませんし、火薬のような新技術を見つけて素早く使いこなし、迅速な勝利に結びつけなければなりません。なぜなら、長期的に人手不足に陥るのが目に見えているからです」とも言及しています。

ウクライナの支援を行ってきた西側諸国ですが、彼らにとってはウクライナに武器を提供する義務はありません。ただし、ザルジニー総司令官はこれまでの武器の提供に感謝しており、「提供が遅い・少ない・届かない」といった批判は行っていません。

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