「エルサレム旧市街、収入も生活もない」静まり返る状況

エルサレムの旧市街

エルサレムの旧市街は、今、巡礼者も観光客の姿もなく、不気味なほど静まり返っています。パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)を実効支配するイスラム組織ハマス(Hamas)とイスラエル軍の戦闘開始から約1か月が経ちました。迷路のような旧市街のほとんどの商店は、シャッターを閉めたままです。

土産物店の店主で、祖父の代からツアーガイドをしているというマルワン・アティエさん(48)は、「観光産業はもうない」と嘆きます。「家族も子どももいるのに、商売も収入も生活もない。金がないのに使いようもないだろ?」と語りました。

イスラエル当局によれば、ハマスが攻撃を仕掛けた10月7日以来、エルサレムの観光部門はほぼ崩壊しています。

エルサレムの静けさ

AFPは2日、イエス・キリストが埋葬されたと信じられている聖墳墓教会(Church of the Holy Sepulchre)を訪れましたが、空洞のようなホールを時折、聖職者が通るだけでした。

エルサレムに留学中だというイタリア人の神学生ピエトロ・マッツォッコさん(31)は「今はご覧のように完全に空っぽ。人がいません」と語りました。

イスラエルに乗り入れている多くの航空便が運休し、観光ツアーもキャンセルされ、旧市街には人けがありません。

現地の人々の声

フランス人のラシッドさん(24)は現在の状況を自分の目で確かめたいと思い、旅行をキャンセルしなかったそうです。ヨルダンから陸路で国境を越えたが、イスラエル当局の入国審査は長時間にわたりました。

ラシッドさんは街を歩いていると、何度も警官に呼び止められるといいます。「道に誰もいなくて妙な感じがする。両方の人々が恐れて、敏感になっている。私が誰なのか、どこから来たのかと警戒心が強い」と話します。

イスラエルの併合宣言とその影響

イスラエルが併合を宣言している東エルサレムでは、検問とパトロールが強化され、アルアクサ・モスク(Al-Aqsa Mosque)の金曜礼拝も参加する人が減っています。

旧市街の住民の大半はパレスチナ人であり、イスラエルの治安部隊による嫌がらせや暴力を恐れて、家から出ようとする人はほとんどいません。

ガザでの武力衝突は、エルサレムに近いヨルダン川西岸(West Bank)にも影響を与えています。紛争開始以降、イスラエル軍やユダヤ人入植者との衝突でパレスチナ人130人以上が命を落としています。

イスラエル軍に包囲されているガザ地区に連帯するゼネストが行われ、東エルサレムやヨルダン川西岸の店は完全に閉店しました。翌日は多くの店主が身の安全を考えて、AFPの取材に応じませんでした。

店主の一人であるエマド・シディイさんは「今は危険だ。安全じゃない」と言います。「(イスラエル軍の)兵士はみんなを蹴とばしていく。人間に対する態度じゃない」と訴えました。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相はハマスとの停戦はあり得ないと断言しており、絶望は深まるばかりです。

「私たちはあらゆる人々のための平和を望んでいる」とシディイさんは語ります。「動物のように殺し合うのはごめんだ。私たちは生きる必要がある」。

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