【ソウル=桜井紀雄】韓国を就任後初めて訪れたエスパー米国防長官は9日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と会談し、日米韓協力の重要性を強調し、文氏も同意した。大統領府高官が明らかにした。韓国で日本による輸出管理厳格化に反発し、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を求める声が高まる中、日米韓の安全保障協力を揺るがす行為を控えるよう促した形だ。
GSOMIA問題を「うまく解決すべきだ」との認識で一致したが、米側から延長を求めるなどの具体的な話は出なかったという。
エスパー氏は鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相とも会談し、「米韓は平和な朝鮮半島と自由で開かれたインド太平洋地域に対するビジョンを共有している」とし、米韓同盟の結束を再確認。中国牽制(けんせい)を狙って日米が推進する「インド太平洋戦略」への韓国の積極的な関与を念押ししたといえる。北朝鮮が完全な非核化に取り組むまで制裁を続ける方針も示した。
韓国国防省関係者によると、エスパー氏は中東・ホルムズ海峡での「航行の自由」の必要性を挙げて米主導の有志連合への参加を要請。鄭氏は「重要性を認識し、多様な案を検討している」と応じた。鄭氏は会談冒頭、日本側の措置を「経済報復」だとし、「韓米日の安保協力に悪影響を及ぼしている」と非難した。
エスパー氏は康京和(カン・ギョンファ)外相とも会談。いずれの会談でもトランプ米大統領が「韓国と増額で合意した」とした在韓米軍の駐留経費負担問題について踏み込んだ議論はなかったという。