英最高裁、不法入国者のルワンダ移送は「違法」 「堂々めぐりやめるべき」と首相

イギリス政府の不法入国者の移送計画が英国の最高裁で「違法」と判断されました。小型ボートを使って英仏海峡を渡りイギリスに不法入国した人々をアフリカのルワンダに移送する計画に対し、最高裁は人権侵害になるとして控訴院の判断を支持しました。

ルワンダ移送計画は「違法」と判断される

最高裁の判断により、現行の移送政策は実施できないことが明確になりました。リシ・スーナク英首相は、新たな条約をルワンダと交渉する方針を述べ、イギリスの法律を変更する準備があると語りました。

過去数年間、不法入国者の問題は物議を醸しており、2022年にはボリス・ジョンソン首相(当時)がルワンダ移送計画を発表して以来、法的な争いが続いてきました。

移送先のルワンダは安全ではない場所か?

ルワンダへの移送については、ルワンダの亡命制度が不公平であるとの指摘があり、移民政策の見直しが必要とされています。国際規範では、亡命希望者が危険な状況に陥る可能性がある場合、もとの国に送り返すことは禁じられています。

最高裁は、ルワンダへの移送の安全性について適切な評価が行われていなかったと判断しました。また、ルワンダ政府が亡命制度を修正し、安全性を確保する能力に疑問があると指摘しました。

「正式な条約」を求める

最高裁の判断により、移送計画の実現は困難になりましたが、スーナク首相はルワンダとの正式な条約を締結する準備ができており、計画を復活させるために法的な枠組みを見直す用意があると述べました。

条約はイギリスとルワンダの合意を強固なものにし、移送計画に法的な基盤を与えるものとされています。最高裁が求める保証を提供するものとなる予定です。

スーナク英首相、「堂々めぐり終わらせるべき」と訴える

最高裁の判断は受け入れるとしながらも、スーナク首相は法的な争いを早急に終結させる必要性を述べました。また、新たな条約と緊急事態法は懸念に対処し、ルワンダの安全性を確認するものと説明しました。

しかし、欧州人権裁判所(ECtHR)からの申し立てにも直面する可能性があるとした上で、「外国の裁判所によって移送を阻止されることは認めない。もし、ストラスブールの裁判所が英国の意向に反し介入するのであれば、私は飛行機を離陸させるために必要な措置を取る」と述べました。

イギリスでは不法入国者の数が増加しており、推定で今年に入って2万8000人が入国しました。来年の総選挙を控える中、ルワンダ行きの便を出発させるかどうかは慎重に検討される必要があります。

【出典】BBC News