スーパーファミコンの底にあった「謎の端子」 時代を先取りした「夢の機器」が遊べた?

スーパーファミコン底部の端子

1990年に任天堂から発売されたゲーム機「スーパーファミコン」は、私たちにとっては「スーファミ」といえば親しみのある愛称です。『スーパーマリオワールド』や『スーパーマリオカート』など、数々の名作を生み出しました。

スーファミは、1983年に発売された「ファミリーコンピュータ」から大きく進化し、グラフィックやサウンドなど、さまざまな新機能が搭載されました。多くの人々がスーファミでゲームを楽しんだことでしょう。しかし、この本体の底に「謎の端子」があることに気づいた方は、そう多くはいないのではないでしょうか。

実は、この端子はスーファミの専用周辺機器である「サテラビュー(Satellaview)」を接続するためのものです。当時、まさに時代を先取りし過ぎた周辺機器「サテラビュー」について、振り返ってみましょう。

当時では高度過ぎた? 衛星データ放送を実現

1995年に任天堂から発売された「サテラビュー」は、BSアナログ放送を利用してスーパーファミコン向けの衛星データ放送サービスを受信するためのデータ放送受信端末(モデム)です。

使用する際には、スーパーファミコンの裏側にある端子にサテラビュー本体を接続します。そして、専用のAVアダプタを使い、コンセントやテレビ、BSチューナーと連携させます。最後にスーパーファミコン本体にサテラビュー専用のカセット『BS-X それは名前を盗まれた街の物語』を挿入すれば準備完了です。

データ放送では、ゲーム情報の報道などを視聴することができました。今でいう「YouTube」や「ニコニコ動画」のような、任天堂による動画配信サービスと言っても分かりやすいでしょう。

さらに驚きなのは、『BSドラゴンクエストI』や『ゼルダの伝説』などのゲームを複数のプレイヤーとリアルタイムでプレイできたことです。まさにオンラインゲームの先駆けともいえる体験が可能でした。

時代が違っていたら主流になっていたかも?

サテラビューを接続する端子は、スーパーファミコンの説明書には「28PIN接続コネクタ」と記載されていましたが、この端子を何に使うのかについては書かれていませんでした。

サテラビューの最も大きな特徴は、BS放送を通じてゲームをダウンロードできることでした。専用カセットである『BS-X それは名前を盗まれた街の物語』は、「親亀子亀方式」と呼ばれるカセットにカセットを挿すタイプになっており、メモリーパックを挿入することで、サテラビューからダウンロードしたゲームを遊ぶことができました。

配信されたゲームには『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』や『スーパーボンバーマン』などの大作も多数存在していました。また、日本では未発売だった『ワリオの森』や、ミニゲームが多数収録された『カービィのおもちゃ箱』など、有名なタイトルも配信されました。

さらに、スーパーファミコンの画面を見ながら音声放送を楽しむことができる「ネット連動型のラジオ番組」も充実していました。お笑いコンビ「爆笑問題」のふたりがパーソナリティを務めるトーク番組や女優の裕木奈江さんがメーカーの社長を招いてトークを楽しむ番組などが放送されました。

番組の放送時間外には、実際に発売されている雑誌の内容を閲覧することもできました。当時、インターネットが普及していない時代のコンテンツとしては、非常に充実していたと言えるでしょう。

現在のゲームハードでも、Nintendo SwitchやPlayStation 5などではゲームのダウンロードサービスが当たり前に利用できますが、実はスーパーファミコンの時代からその先駆けて実現していたのです。サテラビューのサービスは約5年で終了してしまいましたが、現在の任天堂の「Switch Online」の先祖とも言える存在です。

BS放送を通じたオンラインゲームの実現やゲームの配信サービス展開など、先進的なゲーム体験を提供した「サテラビュー」は、当時の子供たちにとっては「夢の機器」となるはずでした。しかし、家庭用のBS放送受信機器自体が普及していなかったこともあり、あまり認知が広がらずに衰退してしまいました。

もし、当時から多くの家庭でBS放送が普及していたならば、サテラビューは歴代家庭ゲーム機の定番となっていたかもしれませんね。

※本文を一部修正しました(11月23日11時45分)

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