父の病死を「放置」された兄と家族の250日間 弟が初めて知る兄の「不遇」な人生

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ワタルさん(手前)と兄ユタカさん。事件後、2人は週1回のペースで顔を合わせている=埼玉県越谷市で2023年8月29日

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事の発端は、ユタカさん(仮名、48歳)がある朝、目を覚ますと父(当時77歳)が亡くなっていたことだった。しかし、彼には悲しみよりも別の心配が頭をよぎっていたのです。「葬式の費用、どうすればいいのか」という不安でした。

毎日、銀行のATMに通い、父から受け取ったキャッシュカードを使って葬儀費用を賄おうとしました。ただ、亡くなった父には一切触れず、彼はただひたすら座ったままでした。

やがて、25日になりました。偶然、訪れた寺院関係者に父の死を伝えると、警察に通報するよう促されました。そして、捜査員によってユタカさんは死体遺棄容疑で逮捕されたのです。

ユタカさんは、私立大学を卒業後、鮮魚店チェーンの運営会社に入社しましたが、半年で退職し、アルバイトや派遣社員として働き続ける日々が続きました。彼は一生懸命に働いていたつもりでしたが、常に職場で怒られ、作業に追いつけないことも多かったのです。

母親が2006年に病気で亡くなり、弟も家を出て行きました。その後は、ユタカさんと父の2人だけの生活が続いていました。友人はほとんどおらず、家族も父だけでした。

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自室の掃除をするユタカさん=埼玉県越谷市で2023年9月22日

兄弟としての関係は、親密とは言えなかったようです。挨拶を交わすことはあっても、15年以上もちゃんと話す時間はありませんでした。ユタカさんからすれば、弟のワタルさん(仮名、44歳)は仕事熱心でないだらしない人に映っていたのかもしれません。

しかしながら、ニュースを読んでみると、自分が知っていた兄とは異なる側面が浮かび上がってきました。特に印象的だったのは、彼が父のお金を自分のものにしたいと思ったという動機でした。彼は不真面目な一面もあるかもしれませんが、金儲けのために他人を騙すようなことはしませんでした。それが彼の性格だったのです。

かつては兄弟仲が良かった証拠もあります。新潟県で撮影された家族の写真が家に飾ってあります。その写真を見ると、3歳のワタルさんの後ろから手を添え、兄は柔らかい笑顔を浮かべていました。

ワタルさんは兄に会いたいと思い、妻のアキさん(仮名、42歳)と一緒に警察署へ向かったのです。

このような過去を持つユタカさんと家族の250日間。彼らの物語は、誰かに寄り添って聞いてほしいと思います。

日本ニュース24時間