日本にあってドイツにない? 独政府がゲーム産業育成、その背景は

ゲームズコム

自動車、カメラ、工作機械など、製造業で世界にその名をとどろかせるドイツ。ものづくり大国として、日本とも共通点が多い。しかし、日本にはあってドイツにはないものがあります。それは、ゲーム産業です。驚くべきことに、ドイツ政府はゲーム産業の育成に力を入れることを決めました。では、その背景は何でしょうか。

ドイツのゲーム産業の現状

ゲーム見本市「ゲームズコム」は、ドイツ西部のケルンで開催され、世界でも最大級の規模を誇ります。今年8月に開催された見本市には63カ国1227社が出展しました。ドイツのゲーム関連の市場規模は、米国、中国、日本、韓国に次ぐ5位で、欧州では最大規模となっています。

一方で、ドイツのゲーム会社の存在感はほとんどありません。ドイツ国内のゲーム市場では、国産のゲームが占める割合はわずか4.2%に過ぎません。ゲームズコムに出展している企業のうち、7割以上がドイツ以外の企業で、会場では主に任天堂やセガ、バンダイナムコなどの日本企業のブースが目立ちます。ドイツ連邦経済・気候保護省のゲーム課のシュカンダー・モルゲンターラー課長代理は、「ドイツは欧州最大のゲーム市場ですが、残念ながら『ドイツ発』のゲームは存在しません」と嘆いています。

ドイツ政府のゲーム産業への取り組み

ドイツ政府は、2019年にゲーム関連産業育成のための基金を設立し、連邦予算から約78億円を拠出しました。そして、2023年には拠出額を約87億円に増額する予定で、企業によるゲーム開発などを支援しています。

なぜ、今ゲーム産業に力を入れるのでしょうか。それは、ドイツが誇る製造業の基盤が揺らぎつつあるという危機感があるからです。自動車分野では電気自動車(EV)が台頭し、中国メーカーの競争も激化しています。ドイツが誇る緻密なものづくりだけでは、経済を支えることができなくなる可能性があるため、デジタル関連産業にシフトしているのです。その中でも、ドイツ政府はゲーム産業を「我々の経済にとってイノベーションの重要な推進力になる」と位置付けています。

ドイツのゲーム産業の未来

ゲーム産業は、日本や米国のメーカーが世界をリードしています。ドイツが後発であるため、チャンスがあるのでしょうか。

ゲーム産業を調査している日本貿易振興機構(ジェトロ)デジタルマーケティング部の牧野直史主幹は、北欧やポーランド、トルコ、インドなどの新興国でもゲーム産業が急速に成長していることを指摘しています。そのため、ドイツでも新たな有力なゲーム企業が出てくる可能性は十分にあると話しています。

ドイツ政府のゲーム産業への取り組みは、製造業の基盤が揺らぐ中での戦略的な動きです。ゲーム産業がドイツ経済に新たなイノベーションと機会をもたらすことを期待しましょう。

引用元:日本ニュース24時間