“あの一言があれば…” 高速道路上で119番中に事故死、8分超の通話で退避促されず 今もたばこ供える妻、「なんでこんなことを」

角田進治さんの遺影

道路上での事故により亡くなった角田進治さん。彼は、事故の直前にスマートフォンから119番通報を試みましたが、通話中に別の車にはねられてしまいました。彼の次男である隆秀さんは、父のスマートフォンを見て驚きました。なんと、通話時間は8分45秒も続いていたのです。

進治さんは、事故発生後も高速道路から避難せず、通話を続けました。しかし、もしひとりの人が「あなたは安全な場所にいますか」と声をかけてくれたなら、彼は助かったかもしれません。それが、隆秀さんがずっと抱える思いです。

父の進治さんは、長距離トラック運転手として働いてきました。彼は家を空けることが多かったため、隆秀さんは小さい頃から「また来てね」と声をかけることが日常でした。しかし、一度だけ彼の父は、隆秀さんを連れて千葉県までプロ野球を観戦しに行ってくれました。その思い出は今も鮮明に残っています。

進治さんは、仕事中心の生活を送っており、子供を抱っこしたこともありませんでした。しかし最近は、自分には時間がないと口にするようになり、息子たちの子供たちを可愛がることに喜びを感じていました。事故の2日前、孫が自宅に泊まりに来た時に、進治さんは初めて寝かしつけに挑戦しました。緊張もありましたが、結局は孫と一緒に寝落ちしてしまったのです。

進治さんの妻は、翌朝夫が仕事に出かけた後、その喜びが忘れられないといいます。「子供って手がかかるけど、可愛いよね。なんで(私の)子供には触れられなかったのかな」と涙ぐんでいます。それ以来、彼女は毎晩、進治さんが愛していたタバコを供えるために遺影の前で火をつけ続けています。「なんでこんなことをしているのだろう」と彼女は泣きながら問いかけるのです。

進治さんが通話していた119番の指令員は、安全確保や退避を促すことなく進治さんの通話を受けました。隆秀さん自身も市に情報公開請求をし、会話の記録を確認しましたが、消防側は「安全な場所から通報したと認識していた」と説明し、謝罪しなかったと言います。

進治さんの犠牲を受けて、様々な機関が動き出しています。三重県は通報者の安全確保をマニュアルに明記するよう指示し、総務省消防庁は同様の事例を調査しています。

進治さんは、通話中のスマートフォンに、自身が長男(3歳)を抱っこしている写真を残していました。その写真を見た隆秀さんは、父の嬉しそうな笑顔を思い出し、感慨深くなりました。

しかし、進治さんはもう一度孫を抱っこすることは叶いません。あの一言があれば…。進治さんを知る全ての人々が、この思いを忘れることはありません。

日本ニュース24時間: https://jp24h.com