韓国の文在寅政権が、24日の更新判断期限を前に日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると発表した。
これにより、日韓両国が北朝鮮による弾道ミサイル発射など、軍事上の機密情報をやり取りする枠組みが失われる。
GSOMIAは米国を扇の要とする日米、米韓両同盟の抑止力を高めるもので、日米韓3カ国の安全保障協力の基盤だった。
北朝鮮に核・ミサイル戦力を放棄させなければならないのに、破棄はそれに逆行する。日米、米韓同盟の不安定化を望む北朝鮮や中国を喜ばせる愚挙で、極めて遺憾だ。日本政府が文政権に抗議したのは当然である。
北東アジアの安全保障に責任を果たすつもりなら文政権は翻意し、協定を更新すべきだ。
韓国が朴槿恵前政権だった2016年11月にGSOMIAは締結された。自国民の安全や米国との同盟強化に必要と日韓両政府が判断したからである。その後、ミサイル発射など北朝鮮の挑発行為が続き、GSOMIAに基づく機密情報の交換が続いてきた。
日本政府は、「双方に有益で、延長して引き続き情報交換できる関係が望ましい」などと破棄しないよう文政権に呼びかけていた。米国もGSOMIAを重視し、エスパー国防長官らが同様の考えを伝えていた。
韓国大統領府の高官はGSOMIA破棄の理由について、日本が輸出管理の優遇国から韓国を外したことを挙げ、安全保障協力の環境に重大な変化をもたらしたからだと語った。
だが、これは破棄の合理的な理由になっていない。日本が対韓輸出管理を強化したのは、日本製品が不当に兵器転用される恐れが拭えないからである。優遇措置を得たければ、日本の信頼を取り戻す具体的行動をとれば済む話だ。
感情的に反発しているだけではないのか。GSOMIAを一方的に破棄するようでは、日本は、韓国に対する安全保障上の懸念をさらに募らせるだけである。
安全保障を含む日韓関係全体が後退するにとどまらない。核兵器を持つ北朝鮮から韓国を守っている同盟国米国の説得も文政権は無視した。米政府が失望し、米韓同盟にヒビが入りかねない。日本は、朝鮮半島情勢の不安定化に備える必要がある。