ウクライナの「守勢」への移行に停戦論も浮上

ウクライナ国旗

ロシアの侵攻に苦しむウクライナは、今年本格的な反撃を試みましたが、目立った成果は得られませんでした。来年は兵士の追加動員などによる戦力回復を進めつつ、再び反攻の機会をうかがう「守勢」の時期になる見込みです。さらに、露軍の攻勢が継続しウクライナの不利が顕著になれば、欧米諸国が停戦を促す機運が高まる可能性もあります。

ロシアは戦果を強調

今年6月、ウクライナ軍は反攻作戦を開始しました。彼らは南部ザポロジエ州から南下し、アゾフ海沿岸にあるロシア軍の補給路を断ち、南部一帯の奪還を目指しました。しかし、ロシア軍の防衛線に阻まれ、アゾフ海から約100キロ離れたロボティネ村を8月に奪還した後、前進は停止しました。東部ドネツク州のバフムト周辺でも反攻を試みましたが、目立った領土奪還には至りませんでした。

ウクライナが反攻に失敗したとの見方が欧米メディアでも定着しています。その理由として、航空優位の不在、戦力の分散、ロシア軍の堅固な防衛線、国力の差など複合的な要因が挙げられています。

大量の追加動員へ

ウクライナは現在、戦力の再構築に取り組んでいます。

政府は動員の規則を改定する法案を議会に提出しました。この法案では、兵士の招集年齢を27歳から25歳に引き下げるほか、動員免除の範囲の縮小や国外での動員の容易化などを柱としています。この法案は来年初頭にも成立する見通しです。法案の成立に伴い、50万人規模の追加動員も行われると予想されています。

ウクライナはさらに、欧米の軍需企業を積極的に誘致し、兵器や弾薬の国内生産を増やす方針です。また、ゼレンスキー大統領は、露軍の前進を防ぐために各地に防衛線を構築し、国土を要塞化する計画も示しました。

ただし、追加動員や兵器生産力の強化、防衛線の構築には時間がかかります。来年、米国から供与される戦闘機F16による支援も始まる見通しですが、停滞した戦局を変えることができるかは不透明です。

米大統領選も注目

欧米では、停戦の可能性が議論され始めています。

米CNBCテレビは今月25日の報道で、「現状を考えると、ウクライナには停戦交渉以外の選択肢がほとんどない」という専門家の意見を紹介しました。この専門家は、来年の米大統領選でウクライナ支援に否定的なトランプ前大統領が復帰すれば、停戦の圧力がさらに強まると予想しています。

また、米政治サイトのPoliticoは、欧米当局者の話として、将来の対露交渉を見越してウクライナの立場を改善することに焦点を移していると報じています。

来年は停戦の動きが表面化するかどうかも焦点となるでしょう。

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