GSOMIA破棄、文在寅政権が極端な決定に走ったワケ

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23日、ソウルで記者会見する韓国大統領府の金鉉宗・国家安保室第2次長
23日、ソウルで記者会見する韓国大統領府の金鉉宗・国家安保室第2次長

 【ソウル=桜井紀雄】韓国政府が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄という極端な決定に走ったのはなぜか。文在寅(ムン・ジェイン)大統領や高官の発言からは、安倍晋三政権が対北政策や経済発展を妨げようとしているとの被害意識に凝り固まっていった過程が浮かぶ。相互不信による日韓関係の変質を象徴している。

 「政府内では、7月末までGSOMIAを維持しようとの意見が多数を占め、そうなると思われていた」

 大統領府が22日に協定破棄を発表後、高官はこう説明した。それが日本政府による2日の安全保障上の輸出管理の優遇対象からの韓国除外決定で破棄に傾く。日本の措置が「韓日の安保協力の根幹を揺るがした」とみなしたのだ。

 文政権はひそかに協議を重ね、破棄が及ぼす影響を検討。非公開の世論調査も「毎日のように実施した」(高官)。2016年の締結以来、協定に基づき計29回の情報が交換されたが、大統領府は「最近は対象が減少傾向だ」と判断する。北朝鮮が5月以降、8回もミサイルなどの発射を繰り返し、日韓はほぼ毎回、情報交換してきたが、政権中枢を対北融和派が占める中、実情は軽視された。

 外交・安保の現場では「破棄するわけがない」との見通しを持ち、韓国メディアも協定延長との観測を報じていた。22日の国家安全保障会議(NSC)では、国防省関係者が維持を強く主張したというが、大勢を覆せなかった。

 大統領府は、首脳会談を提案したほか、7月に2回特使を日本に送ったと明らかにし、外交的努力を尽くしたと主張。「非常に意味あるシグナル」(高官)として、文氏が今月15日の演説で対話を呼び掛けたが、無反応だったことが決定打となったという。

 大統領府国家安保室の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)第2次長は23日、演説内容も事前に伝えもしたが、日本は「国家的自尊心まで毀損(きそん)するほどの無視で一貫し、外交的欠礼を犯した」と語気を強めた。

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 文氏は2日の閣議で、日本による半導体材料の輸出管理厳格化について「韓国経済の未来の成長を妨げ、打撃を加えようという明白な意図がある」と断言。既に対抗措置に言及していた。その後、材料の輸出許可が明らかになるが、文字通りの管理厳格化とは受け取らず、「加害者の日本が居直った」という文氏の被害意識は変わらなかった。

 これには背景があった。文氏は4月に半導体大手のサムスン電子の工場を李在鎔(イ・ジェヨン)副会長と訪問。新たな半導体事業を経済成長の原動力にすると宣言した李氏を「積極支援する」と持ち上げた。大企業と朴槿恵(パク・クネ)前大統領の癒着疑惑を糾弾し、政権を取った文氏とサムスンとの“蜜月”に批判もあったが、思うように経済政策が進まない中、背に腹は代えられなかった。その肝煎り事業を日本が狙い撃ちしたとみなしたのだ。

 経済にとどまらない。文氏は7月、輸出管理に絡み、韓国の戦略物資の北朝鮮流出疑惑が日本で浮上したことに「南北関係の発展と朝鮮半島平和のために総力を挙げる韓国政府への重大な挑戦だ」と主張した。

 金次長も「日本は平昌五輪の際、韓米演習の延期に反対し、北朝鮮にも制裁と圧迫だけが唯一の解決策だといい、在韓日本人の戦時避難訓練を主張した。日本は(対北政策の)障害となってきた」と発言した。大統領府内では、日韓首脳会談でも対北制裁と圧迫を強調してきた安倍政権は、今回の輸出管理措置を通じて「朝鮮半島の平和秩序に亀裂を生じさせようとしている」と認識されていた。

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 文政権が「積弊(積もった悪弊)清算」と称して旧保守政権時代の政策の見直しを進める中、与党や政権主流派にとってはGSOMIAも朴前政権時代に締結された「積弊」の一つに過ぎなかった。

 文氏も大統領就任前の16年12月には「国民的議論なしに拙速に(締結が)推し進められ、再検討の必要がある」と述べていた。日本の輸出管理措置以降、世論調査で破棄賛成が半数近くに上る中、文政権には破棄への抵抗感が少なかった。

 文政権が最も気を使ったのが米韓関係への波及だ。大統領府高官は、米政府と緊密に協議を続け、「外交的努力にも日本から反応がなければ、協定終了は不可避だ」と伝えていたとし、今回の決定も「米国は理解している」と強調した。

 金次長は、米側から日韓が状況を悪化させる措置を取ることを一定期間、凍結する案が提示されたが、「日本は拒否しただけでなく、提案の存在を否定した」と主張した。高官は「日韓のGSOMIAのせいで揺らぐ韓米同盟ではない」とも力説した。

 だが、米政府が破棄直後に出した反応は「強い懸念と失望」だった。文政権は、日本だけでなく、米国との信頼関係をも傷付けた事実は否定できない。

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