自民党の石井浩郎参院議員(55)=秋田選挙区=が行ったデリバティブ(金融派生商品)取引をめぐり、JPアセット証券(東京)が、石井議員から担保として預かった証拠金の不足分を一時的に負担するなどの利益提供を行っていたことが5日、関係者への取材で分かった。証券取引等監視委員会は8月30日付で金融商品取引法が禁じる「特別の利益提供」に当たるとして同社を行政処分するよう金融庁に勧告した。
監視委の発表などによると、検査対象となった昨年10月1日から今年5月7日までの間、石井議員の取引では141営業日のうち111営業日で担保として預かった証拠金に約40万~6200万円の不足が生じた。だが、石井議員が取引継続を要望したため、同社は不足分を負担し、新規取引も受けていたという。
金商法に基づく内閣府令では「顧客に対し、特別の利益を提供する行為」を禁止。監視委は、同社が石井議員の不足証拠金を負担したことが「特別の利益提供」に該当すると判断し、「社会通念上、妥当性・相当性を著しく欠く」と指摘した。
石井議員は元プロ野球選手で平成2年にドラフト3位で近鉄(現オリックス)に入団後、巨人、ロッテなどに在籍。引退後は野球解説者などを務め、22年の参院選で初当選し、現在2期目で自民党副幹事長などを務めている。
石井議員の事務所は「証券会社に負担させる結果となってしまったことは認識が甘く勉強不足だった。関係者におわび申し上げる。現在すべて清算している」とコメントした。
また、JPアセット証券は「個人情報に関わるので特定の顧客との取引については答えられない」とした上で「勧告を真摯(しんし)に受け止め、再発防止に努める」としている。