静脈見つからず死刑執行に失敗 – 米アイダホ州、異例のカテーテル挿入による再執行へ

アメリカのアイダホ州で、薬物注射による死刑執行が静脈を発見できずに失敗するという異例の事態が発生しました。州矯正局は、11月13日に心臓付近の中心静脈にカテーテルを挿入する方法で再執行を行うことを決定しました。

事件の発端は2月、5件の殺人事件で終身刑となり服役中だったトーマス・クリーチ死刑囚(74)に対して行われる予定だった死刑執行でした。彼は1981年に刑務所内で別の受刑者を殺害した罪で死刑が確定していました。

静脈見つからず死刑執行に失敗 - 米アイダホ州、異例のカテーテル挿入による再執行へ
2009年当時のトーマス・クリーチ受刑者の写真 (提供: 米アイダホ州矯正局 / AP)

執行当日、医師らはクリーチ死刑囚の腕や脚など、あらゆる部位を探し求めましたが、静脈を見つけることができませんでした。1時間にも及ぶ試行錯誤の末、執行は断念されました。

アイダホ州では12年間、死刑は執行されていませんでしたが、今回の執行失敗を受け、州矯正局はカテーテル挿入による執行を行うために刑場を改装する異例の対応を取りました。

通常、アイダホ州では執行の透明性を確保するため、メディア関係者などがガラス越しに執行の様子を目撃することができます。しかし、カテーテル挿入による執行の場合、死刑囚の下半身などが露出する可能性があることから、「死刑囚の尊厳を守る」という観点から、今回は映像を視聴する形になるとのことです。

静脈見つからず死刑執行に失敗 - 米アイダホ州、異例のカテーテル挿入による再執行へ
米アラバマ州の矯正施設にある死刑執行室の一例

日本では明治時代、絞柱による死刑執行後、蘇生した死刑囚が再執行を免れた「石鉄県死刑囚蘇生事件」が記録されています。しかし、現代の日本では、執行方法の進化により、このような事態は起こり得ないとされています。

今回のアイダホ州のケースは、死刑執行における予期せぬ事態、そして倫理的な問題を改めて浮き彫りにする出来事となりました。