「麻酔でダイイングメッセージ」 過激演出のバラエティ番組に医師が激怒!その理由とは?

近年、過激な演出で視聴者を引きつけるバラエティ番組が増加していますが、その倫理観が問われる事態も発生しています。今回は、Amazon Prime Videoで配信中の番組「KILLAH KUTS」の企画内容に、医療関係者から批判が殺到しているという騒動について詳しく解説していきます。

問題となった「麻酔ダイイングメッセージ」企画とは?

「KILLAH KUTS」は、地上波では放送できない過激な内容をテーマに、芸人たちが様々な企画に挑戦する番組です。その中でも、特に物議を醸しているのが、第2話「麻酔ダイイングメッセージ」という企画です。

この企画では、ドラマなどで見られるような、被害者が殺害される間際に残すダイイングメッセージを、意識を失う麻酔を使って再現するというものです。出演した芸人たちは、刑事役と被害者役に分かれ、病院を舞台に殺害現場を再現。麻酔を投与された芸人は、当然のことながら意識を失っていきました。

番組MCの伊集院光さんは、「あくまで今回は、胃カメラ検査をするついでに、麻酔がかかるんだったらこういうこともやってみようと。麻酔を悪ふざけとか遊びに使うなんてありえないですね。あくまでそっちはオマケでございます」と強調し、医師による検査の様子も映像で流していました。しかし、番組全体の長さから見ると、その時間はわずかだったと言われています。

なぜ医師たちは激怒したのか?

この企画に対して、公益社団法人である日本麻酔科学会は、「静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用について」という声明を発表し、「10月14日配信開始の番組において、プロポフォールが不適切使用されたことについて、深い憂慮を抱いております。当学会として、麻酔薬の不適切使用は断じて容認できません」と、怒りを露わにしました。

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では、なぜ医師たちはここまで激怒しているのでしょうか?五良会クリニック白金高輪理事長である五藤良将医師は、麻酔薬、特にプロポフォールのような静脈麻酔薬は非常に強力かつ危険な薬剤であり、適切な監視と管理なしに使用すると、呼吸抑制などを引き起こし、致命的な結果をもたらす可能性があると指摘しています。

五藤医師は、過去に歌手のマイケル・ジャクソンさんがプロポフォールの不適切使用で亡くなった事件を例に挙げ、「プロポフォール以外でも、麻酔薬はその特性上、短時間で患者の意識を低下させるだけでなく、呼吸や循環機能に直接影響を与えるため、わずかなミスでも重大な結果を招く可能性があります。適切な量が守られなかった場合、呼吸停止や心停止が突発的に発生するリスクが高まります。このような強力な薬剤が、番組の企画という“娯楽目的”で使用されることは、医療従事者として決して容認できるものではありません。医療はサービスかもしれませんが、その本質は困っている患者さんを助けるということ。単なる娯楽のために、限られた医療資源を無駄遣いすべきではありません」と訴えています。

バラエティ番組の過激化と倫理観

近年、地上波ではコンプライアンスが重視され、過激な演出はスポンサーが敬遠するため難しくなっています。一方、配信番組は地上波に比べて規制が緩く、企画が通りやすいという現状があります。しかし、配信番組だからといって何をしても許されるわけではありません。

今回の騒動は、バラエティ番組の過激化と倫理観について、改めて考えさせられる出来事となりました。視聴者も、番組を楽しむだけでなく、その内容について、倫理的な観点から考える必要があると言えるでしょう。