鉄条網と監視カメラ:厳重化する中朝国境が浮き彫りにする北朝鮮の現実

中国と北朝鮮の国境地帯では、近年、国境警備が著しく強化されています。鴨緑江を挟んだわずか1400キロの国境線には、鉄条網や監視カメラが張り巡らされ、北朝鮮の人々の往来を厳しく制限しています。

高まる壁:三重のフェンスとAI監視システム

遼寧省丹東市から北朝鮮を望むと、そこには三重のフェンスがそびえ立ちます。中国側が二重、北朝鮮側が一層のフェンスを設置し、その間には監視カメラがぎっしりと設置されています。特に、これまで死角とされてきた黄金坪周辺にも、昨年下半期からカメラの数が大幅に増設されたとのことです。

これらの監視カメラは、AI(人工知能)を搭載した最新システムと連動し、24時間体制で国境を監視しています。かつて脱北者が利用していたルートは、今や鉄壁の要塞と化しています。

厳重な監視体制:脱北者数の減少と「巨大な収容所」

この厳重な国境管理体制は、脱北者数の減少に直結しています。韓国統一部の統計によると、2009年には年間3000人近くに達していた韓国への脱北者数は、金正恩政権発足後の2012年には1000人台に減少し、昨年はわずか196人となりました。

北朝鮮の経済難や人権状況の悪化にもかかわらず、脱北が困難になっている現状は、中国との国境が「巨大な収容所」と化していることを物語っています。

中朝関係の変化:国境封鎖強化の背景

北朝鮮は、核開発による国際社会からの制裁や自然災害による経済難を背景に、国境警備を強化し、脱北者の流出を阻止しようとしています。

一方、中国もまた、脱北者の送還問題を避けるため、国境警備の強化に力を入れています。近年、北朝鮮がロシアとの軍事協力を強化し、中国との距離を置いていることも、中国側の国境封鎖強化の要因となっているとされています。

中国全土に広がる監視網:脱北者の逃亡を阻む「AIの目」

中国国内においても、AI顔認識カメラや電子身分証チェックといった監視システムが急速に整備されており、脱北者にとって、中国国内での移動は極めて困難になっています。

たとえ国境を越えることができても、中国国内で身動きが取れなければ、東南アジア諸国への逃亡は不可能に近いと言えます。

閉ざされた国境が突きつける現実

中朝国境の厳重な監視体制は、北朝鮮の人々が置かれている過酷な現実を浮き彫りにしています。国際社会は、北朝鮮の人権状況の改善に向けた取り組みを強化するとともに、脱北者に対する支援策を充実させる必要があります。