【認知症介護のリアル】笑いと涙の母娘の日々: 高学歴シングルが直面する親の介護と社会の歪み

近年、高齢化が進む日本では、認知症患者とその家族の生活が大きな社会問題となっています。2024年には、65歳以上の5人に1人が認知症になると予測されており、その数は700万人に達するとも言われています。

今回は、脳科学者の恩蔵絢子氏と映画監督の信友直子氏による共著『認知症介護のリアル 笑いと涙の母娘の日々(そして時々、父も)』を題材に、認知症という病と、それを支える家族の現実、そして日本社会が抱える課題について探っていきます。

認知症という病: 知性を奪い、社会から孤立させる現実

認知症は、かつて「痴呆症」と呼ばれていた病気です。病名が変わっても、その本質は変わらず、人の知性を徐々に奪い、社会生活を困難にさせる病気であることに変わりはありません。

認知症患者は、日々の生活の中で、今まで当たり前にできていたことができなくなっていくことに苦悩します。そして、周囲の人々は、その変化に戸惑い、どのように接すれば良いのか分からず、苦しむことになります。

高学歴シングル女性が直面する親の介護: 仕事との両立、経済的負担、そして社会の偏見

『認知症介護のリアル』は、高学歴で未婚の娘を持つ2人の母親が認知症を発症したことから始まる物語です。

著者の恩蔵氏は、脳科学者として活躍する傍ら、認知症の母親と同居し、介護を続けています。一方、信友氏は、映画監督として多忙な日々を送りながら、遠方で暮らす認知症の母親をサポートしています。

2人の共通点は、高学歴で未婚、そして母親が認知症であること。彼女たちは、仕事と介護の両立、経済的な負担、そして社会的な偏見など、多くの困難に直面します。

「共助」と「寛容」のための財源: 認知症介護の現実と日本の未来

本書では、恩蔵氏と信友氏の対談を通して、認知症介護の現実が赤裸々に描かれています。介護施設の不足、介護職員の低賃金、そして家族に重くのしかかる経済的・精神的負担など、日本の認知症介護が抱える問題は山積みです。

高学歴シングルと老親高学歴シングルと老親

2人の経験を通して、私たちが考えなければならないのは、「共助」と「寛容」の重要性です。認知症という病気に対する理解を深め、地域社会全体で支え合うシステムを構築していくことが必要不可欠です。

そして、そのためには、財源の確保が不可欠です。介護保険制度の充実、介護職員の待遇改善、そして認知症に関する研究開発など、多岐にわたる分野への投資が求められています。

笑いと涙の先に: 認知症と共に生きる社会を目指して

『認知症介護のリアル』は、決して明るい話ばかりではありません。しかし、その中には、認知症の母親との日々の中で見つけた小さな喜びや、家族の絆の大切さなど、心温まるエピソードも数多く綴られています。

認知症は、決して他人事ではありません。誰もが、いつかは直面する可能性のある問題です。本書を通して、認知症という病と、それを支える家族の現実について、改めて考えてみませんか?