参院選に蔓延る排外主義デマ:人権団体が警鐘「外国人優遇は根拠なし」

来る7月20日投開票の参議院議員選挙を目前に控え、日本国内で外国人を排除する差別的な政策を各政党が競い合う、異常かつ危険な状況が顕在化しています。「日本人ファースト」を掲げる参政党をはじめ、「違法外国人ゼロ」(自民党)、「治安と国籍制度の適正化」(日本維新の会)、「移民政策の是正」(日本保守党)といった排外主義的なスローガンが目立ちます。街頭演説やポスター、選挙公報、政見放送を通じて、「外国人が優遇されている」「治安を悪化させている」といった根拠のないデマが広く拡散されており、人々の経済的な不満や不安につけ込み、外国人をスケープゴートにすることで支持を集めるという極右勢力の常套手段が用いられています。この行為は、経済政策の失敗という政治の根本的な責任を覆い隠すだけでなく、本来守られるべき人権の尊重という政策を遠ざけ、さらにはマイノリティの命を危険にさらす深刻な事態を招いています。

こうした多層的に倒錯した社会状況に対抗するため、外国人の人権擁護や難民支援に取り組む8団体が7月8日、国会内で緊急共同声明を発表する記者会見を開きました。この声明は、「外国人が優遇されているというのは根拠のないデマである」という事実を明確に突きつけ、同時に「政府や国会には人種差別を禁止し、終了させる義務がある」と強く訴え、政治による排外主義キャンペーンを厳しく批判しました。

国会内で開かれた記者会見で、緊急共同声明を発表する人権団体のメンバーたち。外国人差別の是正と排外主義への警鐘を訴える。国会内で開かれた記者会見で、緊急共同声明を発表する人権団体のメンバーたち。外国人差別の是正と排外主義への警鐘を訴える。

高まる排外主義と政治の責任

ヘイトスピーチやヘイトクライムは後を絶たず、特に在日クルド人に対しては子どもを標的にした集団暴行といった深刻な事件も発生しています。しかし、政党や政治家は差別の是正に先頭に立たないどころか、公正公平な民主主義社会を構築する場であるはずの選挙において、むしろ積極的に差別を扇動しています。この排外主義の台頭は、共生社会を破壊し、最終的には戦争への地ならしとなる極めて危険な動きであると専門家は警鐘を鳴らしています。

「優遇」説の虚偽を暴く専門家の見解

人種差別撤廃法の制定を目指す外国人人権法連絡会の師岡康子弁護士は、「大前提として、外国人は税金や社会保険料をきちんと払っている」と強調しました。その上で、「彼らには選挙権がなく、意見を表明する権利が極めて制限されており、外国人の基本的な人権を保障する基本法すら存在しない」と述べ、「優遇」とは真逆の現状を訴えました。

師岡康子弁護士の指摘:選挙権なく基本的人権も制限

師岡弁護士は、特定の用語の使用についても厳しく批判しています。「『違法外国人』という言葉は、外国人という存在自体が『違法』であるかのような偏見を煽るものだ」と指摘。また、「『不法滞在者』という表現も、難民など様々な事情で在留資格がない人々を一括りに『不法』と決めつけ、問答無用で排斥しようとする意図がある」と述べ、その問題性を強調しました。さらに、「日本人ファースト」というスローガンについても、「外国人というだけで『ファーストではない』、つまり『ないがしろにしていい』というメッセージを含んでおり、これが排外主義へと直結する」と断じました。

労働者の賃金と外国人の関係の誤解

「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」の鳥井一平共同代表理事は、「日本人の賃金が上がらないのは外国人労働者の責任だという主張は、どこにも事実が見当たらない」と憤りを表明しました。同氏は、「労働組合の弱体化や、労働者を使い捨てにするという企業側の発想こそが根本的な原因である」と述べ、問題の所在を明確にしました。

医療・生活保護利用の現実とデマの危険性

生活困窮者支援を行う「つくろい東京ファンド」の大澤優真氏も、医療や生活保護で外国人が優遇されているというデマに対し、「外国籍者が利用できるサービスは非常に限定的であり、優遇されている事実は一切ない」と断言しました。その上で、「デマを根拠にした議論は、最終的に社会全体を破壊する危険性がある」と警鐘を鳴らしました。

社会全体の変革を促すために

師岡弁護士は、改めて「排外主義の台頭は共生社会を破壊し、戦争への地ならしといえる極めて危険なものだ」と強調しました。そして、「マジョリティである日本国籍者が先頭に立つべきである」と強く呼びかけました。外国ルーツの人々は声を上げればさらに攻撃されるのではないかと強い恐怖を感じており、彼らが自由に意見を表明できる状況ではないためです。社会を形成する第一の責任を持つ有権者が自らの責任においてこの状況を変えるべきであり、その有権者に事実と真実を届ける報道が何よりも求められています。

参考文献

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