米国の富豪で実業家のイーロン・マスク氏は19日、11月5日の大統領選で最も激戦になっている東部ペンシルベニア州で「言論の自由と銃所持の権利」を支持する署名活動に賛同した登録有権者の中から「毎日1人に100万ドル(約1億5000万円)を授与する」と発表した。自身が支援する共和党のトランプ前大統領を側面支援する狙いがあるが、巨額の「報奨金」をエサに有権者を誘う脱法的な手法には批判も出ている。
マスク氏は自身が設立した政治活動委員会(PAC)「アメリカ」を通じて、今月上旬に署名活動を開始した。激戦7州で署名者を紹介した人には47ドル(約7000円)の謝礼を支払うキャンペーンを展開。17日にはペンシルベニア州に限って謝礼を100ドル(約1万5000円)に増額したが、今回はさらに桁外れの報奨金を用意した。「当選者」はランダムに選ばれるとしており、19日にマスク氏が参加した集会で初回の当選者の男性を発表した。
米メディアによると、マスク氏は7月にトランプ氏が銃撃された事件後に支持を表明。9月までの3カ月間に自身のPACに計約7500万ドル(約112億5000万円)を投じて、トランプ氏を支援している。
米大統領選では各州と首都ワシントンに人口などに応じて割りあてられた選挙人の獲得数を競う。ペンシルベニア州は激戦7州の中で最多の19人の選挙人が配分されており、トランプ氏と民主党のハリス副大統領の陣営は最も重視している。
米国の連邦法では、投票や有権者登録と引き換えに金銭を授受することは禁止されている。有権者の買収行為も禁止されているが、マスク氏の活動は直接トランプ氏への投票や有権者登録を呼びかけているわけではない。ただ、米メディアによると、マスク氏のキャンペーンは登録有権者だけを対象にしているため、違法である可能性があるとする選挙法の専門家もいるという。【ワシントン秋山信一】