人生でおそらく初めての横入りをされました。まずですね、何かを食べるために列に並ぶことを極力避けてきた私でして、地方で滞在したホテルの周りに飲食店が少なくて、仕方なく並んだ時のお話なんです。ラーメン屋さんです。
並んでも20~30分くらいで、これなら許容範囲かと心の内で思ったわけです。やけに外国の方々が並んでいらっしゃいまして、観光ガイドか何かに載っているのかなんなのか分かりませんが、きっと有名な店なんだな、なら多少並んでも元が取れるんじゃないかと少し気持ちも上がってたのです。そんな時にですね、たぶんアジア圏出身であろう女性が、それはもうぬるりと私の前に入ってきまして。ちらっと覗(のぞ)かせてもらった携帯には、アニソンの再生画面が表示されていました。この人を、「日本文化好きアジア圏女性」とここからは呼ばせていただきます。
何食わぬどころか一切の罪の意識も無さそうにアニソンに耳を傾け揺れる日本文化好きアジア圏女性。果てしない揺れにさしもの私も少しばかり苛立(いらだ)ちを覚えまして、どう対処したものか考えた結果、見えてないふりをすることを決断いたしました。この場合の見えていないは横入りされたことを黙認する、ではなく日本文化好きアジア圏女性の存在自体を見えてないものとする、です。「元々私の前にいた海外の人の真後ろに並んでいます」という体の距離感をとったわけです。「私が海外の人の次の人です」の顔をして。
自(おの)ずと見えていないことになってる彼女とのスペースは恐ろしいほど狭いものとなってくるわけです。さすがにそれだけ狭いと横揺れも止まり、日本文化好きアジア圏女性と同時に店内に案内されました。結果的に向こうの横揺れも止めるというある程度のストレスを相手に与えることになりました。横入りを許せる広い心を持ちたいです、小さい渡邊です。
流暢(りゅうちょう)な英語を喋(しゃべ)るようになりたいです。先に述べた件も日本人同士だったら間違いなく口頭でお伝えして後ろに並び直させるのですが、いかんせん言語の壁があるなと感じ撤退した次第でして。