最低賃金1500円は「絵に描いた餅」?実現可能性に疑問の声、経済界からも賛否両論

いよいよ衆議院選挙が間近に迫ってきましたね。各党が熱い政策論争を繰り広げる中、経済界を巻き込んで大きな話題となっているのが「最低賃金1500円」です。 実は、ほぼすべての政党がこの公約を掲げているんです。

岸田前首相の目標を前倒し? 各党が「最低賃金1500円」を公約に

2023年8月、岸田文雄前首相は「2030年代半ばまでに時給1500円を目指す」という目標を打ち出しました。 しかし、今回の選挙では、各党がこれを前倒しするかのように「最低賃金1500円」を公約に掲げている状況です。

例えば、石破茂首相は「2020年代に1500円」、公明党は「5年以内」の達成を主張しています。野党に目を向けると、立憲民主党は「1500円以上」、共産党は「1500円以上」を掲げ、全国一律にすることで地域格差の解消を目指すと訴えています。 れいわ新選組と社民党も、全国一律1500円を主張しています。 国民民主党は全国一律1150円の早期実現を掲げており、具体的な数字を打ち出していないのは、日本維新の会と参政党くらいでしょうか。

最低賃金1500円を求めるデモの様子最低賃金1500円を求めるデモの様子

2024年度の日本の最低賃金は1055円(全国平均)で、前年から5.1%上昇しました。 しかし、物価高騰が続く現状では、この上昇も「焼け石に水」と感じている人が多いのではないでしょうか。

経済界の反応は? 経団連会長「達成不可能」、経済同友会代表幹事は「払えない企業は失格」

庶民にとって最低賃金の引き上げは喜ばしいことですが、「2020年代に1500円」という目標は本当に実現可能なのでしょうか? 経済界からは、その実現可能性に疑問を呈する声が上がっています。

10月22日、住友化学会長で経団連会長を務める十倉雅和氏は、「最低賃金1500円」について「目標はチャレンジングでもいいが、とうてい達成不可能」と発言し、牽制しました。 十倉氏によると、岸田政権が掲げた「2030年代半ばに1500円」という目標ですら、年平均で4%程度の引き上げが必要になるとのこと。 2020年代に達成するには7%超、3年で実現するには年15%もの引き上げが必要だとし、現実的ではないと指摘しています。

一方で、最低賃金引き上げに積極的な意見も出ています。 10月18日、サントリー社長で経済同友会の代表幹事である新浪剛史氏は、「最低賃金1500円を払えない経営者は失格」と発言し、波紋を呼びました。 新浪氏は、最低賃金を払えない企業が倒産すれば、従業員はより生産性の高い企業に移ることができると主張。 人件費負担増による中小企業の経営難については、企業同士の合併や買収が進めばいいと反論しています。

このように、日本を代表する経済界のリーダーたちの間でも、最低賃金1500円に対する意見は大きく分かれています。

SNS上でも賛否両論、実現可能性や具体的な方法に疑問の声も

SNS上でも、最低賃金1500円に対する議論が白熱しています。 十倉氏の発言に対しては、「時給1500円で働いて生活できないのがおかしい」「経営者が高額報酬を得ている仕組みこそ問題だ」といった批判的な意見が見られます。

一方で、新浪氏の発言には、「最低賃金が上がれば失業者が増えるだけ」「サントリーの下請け企業はすべて時給1500円払っているのか」といった批判の声も上がっています。

実際に、サントリー関連会社で時給1500円が実現しているわけではありません。 求人情報を見ると、工場見学のアシスタントで1100円、売店のスタッフで1220円といった状況です。

確かに、新浪氏の意見にはきれいごとととれる部分もありますが、声を上げなければ賃金は上がらないのも事実です。

賃上げのツケは誰に? 消費者の負担増や雇用への影響も懸念

最低賃金が引き上げられれば、従業員の生産性が向上しない限り、企業の利益は減ることになります。 その分の費用を商品価格に転嫁すれば、今度は消費者の負担が増加します。

また、賃金負担を嫌がる企業は、雇用を減らしたり、労働時間を短縮したりする可能性があります。 これは、最低賃金の大幅な引き上げを先行して実施した韓国で実際に起こった問題です。 アルバイトが2人から1人に減り、その1人の勤務時間も半分になるといった事態が相次ぎました。

安易な最低賃金の引き上げは、失業率の上昇や企業の倒産を招く可能性もあるのです。

選挙前の甘い言葉に惑わされず、実現可能性を見極めることが重要

SNS上では、最低賃金1500円を公約に掲げる各党に対しても、「実現不可能な公約は意味がない」「具体的な実現方法を示すべきだ」といった批判的な意見が出ています。

選挙前は、どの政党も耳障りの良い政策を掲げがちです。 しかし、本当に大切なのは、その政策が実現可能かどうか、そして、どのような影響があるのかを見極めることです。

最低賃金引き上げは、私たちの生活に直結する重要な問題です。 選挙前の甘い言葉に惑わされることなく、しっかりと考えて投票することが大切です。