「島耕作」辺野古デモ描写で物議 作者の発言と謝罪、そして作品の変化

沖縄の美しい海を望むゴルフ場。人気漫画「島耕作」シリーズ最新話で描かれたのは、主人公・島耕作と地元女性の何気ない会話だった。しかし、その会話の内容が読者の怒りを買うことになるとは、作者自身も予想だにしなかっただろう。

発端は辺野古の埋め立て工事に関する発言

問題となったのは、一緒にゴルフを楽しんでいた地元女性が口にした「抗議する側もアルバイトでやっている人がたくさんいますよ」というセリフ。辺野古の埋め立て工事に対する反対運動を揶揄するようなこの発言は、瞬く間にSNS上で批判の的となった。

「抗議活動に日当が出ている」という情報は、以前からネット上で拡散されているデマ情報の一つだ。読者からは「なぜこのようなデマを作品に盛り込んだのか」「フィクションとはいえ、実在の地名を出してデマを拡散するのは許されない」といった批判が殺到。中には「作者は本当に沖縄のことを理解しているのか」と疑問視する声も上がった。

作者は「知り合いから聞いた」と釈明も…

批判を受け、講談社は「モーニング」公式サイト上で謝罪文を掲載。作者である弘兼憲史氏も「軽率な判断だった」とコメントし、単行本収録時には該当部分を修正する意向を示した。

弘兼氏は、沖縄在住の知人から聞いた話を元にセリフを作成したと説明している。しかし、情報源の確認を怠った責任は重く、結果として多くの読者を傷つけることになってしまった。

サラリーマンの星から“一人バブル”へ

1983年の連載開始以来、読者に愛され続けてきた「島耕作」シリーズ。当初は、等身大のサラリーマンの姿を描いた作品として人気を博していた。しかし、バブル経済の到来とともに、島耕作自身のキャラクターも大きく変化していく。

周囲の女性たちの影響や、持ち前の強運によって、島耕作は次々と困難を乗り越え、出世の階段を駆け上がっていく。バブル崩壊後も、その勢いは衰えることなく、“一人バブル”と揶揄されるほどの成功を収めていくのだ。

時代とともに変化する作品への期待と不安

今回の騒動は、長年「島耕作」シリーズを読み続けてきたファンにとっても、大きな衝撃だったと言えるだろう。時代の変化とともに、作品のテーマや登場人物の価値観も変化していくのは当然のことだ。

しかし、フィクション作品とはいえ、影響力の大きい漫画だからこそ、情報発信には慎重であるべきだ。今回の騒動を教訓に、今後はより一層、作品と向き合っていく必要があるだろう。