Noriyuki Hirata
[東京 22日 ロイター] – 22日の東京株式市場は意外安となった。米半導体大手エヌビディアの史上最高値更新や151円台の円安など買い材料はあったものの、逆に先物中心に売り込まれた。衆院選後の政局不安への警戒感に加えて、上値の重さが意識されるチャートの形状をにらんで海外の短期筋が積極的に売りに動いたようだ。
みずほ証券の中村克彦マーケットストラテジストは「寄り付きからTOPIXが200日線を割り込んだことで嫌気する売りが波及した」との見方を示す。
日経平均は、先物でまとまった売りが断続的に出て一時700円超安に下げ幅を拡げた。前日の米国市場ではダウとS&P500が下落したが、ドル/円が上昇していただけに、値幅が出たことには「意外感がある」(国内証券のアナリスト)との声は多かった。
先物売りの主体は外国人投資家との見方が多い。「衆院選での与党苦戦との報道が相次ぐ中、警戒した海外勢による持ち高調整の売りが膨らんだようだ」と、いちよしアセットマネジメントの秋野充成社長は指摘する。
背景にあるのは、日本株がフランス株の二の舞になることへの懸念だろうと秋野氏はみている。欧州では、ドイツの株価指数DAX30が夏場以降、上昇基調にあり、足元で高値を更新している一方、仏CAC40は春先から低迷が続いている。
フランスではパリ五輪前に実施された議会選挙でいずれの勢力も単独過半数は取れず、連立政権がひとまず発足したものの「予算審議をはじめ難航が予想され、議会運営は極めて不安定」と、第一生命経済研究所の田中理・経済調査部首席エコノミストは指摘する。足元では格付け会社による格付け見直しのリスクもくすぶり、株式市場でも投資家心理を冷やしているとみられている。
国内に目を転じると、主要メディアの世論調査などで与党の苦戦ぶりが伝わっている。朝日新聞が20日付で、共同通信が22日付で、自民党と公明党の与党は過半数を維持できるか微妙な情勢と、それぞれが情勢調査を報じた。
第一生命経済研の田中氏は「どれだけ安定政権になるかが大きな分かれ目となる。仮に自公で過半数割れとなると、政策停滞が意識されかねない」と指摘。「日本株は政治の安定感が土台になっている。それが崩れるとなると、海外勢は見方を変えてくるかもしれない」といちよしAMの秋野氏は話す。
<チャートの崩れ警戒も、「選挙は買い」覆るか>
市場では、1969年以来17回あった解散・総選挙時には選挙期間中の株高がみられたことで「選挙は買い」のアノマリー(経験則)が意識されてきたが、22日終値で解散前日の終値3万8937円を割り込んでおり「与党で過半数割れとの思惑が広がるようなら、今回はアノマリーの再現は難しいかもしれない」(三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジスト)との見方がある。
日経平均自体のチャートの崩れへの警戒感も重なった。22日は、過去1年に資金を投じた投資家の損益分岐点とされる200日移動平均線(3万8198円54銭=22日)で下げ止まったが、これを割り込めば、こちらも売りが出やすいとみられている。下向きの75日線(3万8270円31銭=同)と上向きの200日線が接近し、売りサインのデッドクロス目前でもある。
日経平均は、終値が始値を下回る「陰線」が10日連続となり、後場に動きがより活発化する海外勢の売りが背後に見え隠れする。選挙前後の不安定な相場の中で200日線割れや、75日線と200日線のデッドクロスが形成されると「投げ売りが出ないかの目配りは必要となる。踏ん張りどころといえる」と、みずほの中村氏は話している。
(平田紀之 編集:橋本浩)