【緊急事態なのに】救急隊員への暴力、救急車破壊が横行…その背景と対策は?

近年、緊急車両である救急車や、命を守るために日々奮闘する救急隊員に対する暴力や妨害行為が深刻化しています。一体何が起きているのでしょうか?今回は、東京消防庁の訴えを中心に、その実態と背景、そして私たちにできることを考えていきましょう。

救急隊員の切実な訴え

東京消防庁の公式Xに投稿された、衝撃的な写真の数々。そこには、暴行により引き裂かれた隊員服や、破壊されクモの巣状に割れた救急車のフロントガラスが写し出されていました。

「妨害行為には警察への通報など毅然とした対応をとらざるを得なくなりますが、それは私たちの望む活動ではありません」

これは、東京消防庁による異例の呼びかけです。2019年から今年9月までの間だけで、救急隊員への暴力や救急車の破損といった妨害行為は、なんと111件も発生しているといいます。

現場の声:救急隊員のリアル

「妨害行為自体は割と多い話。お酒が入っている席は、そういうことが起こりがち」

そう話すのは、現役の救急隊員の方です。彼は自身の体験として、酒の席で転倒し鼻血を出した患者を救急車まで歩かせたところ、酔った後輩が「なぜ歩かせるんだ」と激昂し、隊員の胸を押し階段から突き落とそうとしたという事件を語ってくれました。

幸いにも、患者の出血は止まっており、急な階段という状況も考慮し、救急車までは歩いて向かう方が安全だと判断した上での出来事でした。しかし、結果として酔った後輩の暴行により、救急隊は警察に通報せざるを得ず、現場に足止めされることになってしまったのです。

「慢性的に救急隊が足りないという状況が今も続いている。1隊が出動できない状況になると別の応援の隊が来たり、市民サービスの低下になるので。そういったことがないといい」

救急隊員の不足は深刻化しており、1件の妨害行為が他の緊急患者の救助に影響を及ぼす可能性も否定できません。

不要不急の通報が救急隊を圧迫

救急隊員不足に追い打ちをかけるように、119番通報全体の2割を占めているのが「不要不急の通報」です。

「タクシーが止まらないので、今お願いしたところなんです。タクシーがつかまらないの」

「家で通帳をなくしたんですけど」

「トイレの水が止まらないんだけど、どうしたらいいんでしょう?」

これらは実際に寄せられた通報の一部ですが、明らかに緊急性を要するものではありません。このような通報が相次ぐことで、本当に助けが必要な人の元へ救急車が到着するのが遅れてしまう可能性もあるのです。

救急搬送の新制度:茨城県の取り組み

こうした現状を打破しようと、新たな取り組みを始める自治体も出てきました。

茨城県では12月から、緊急性が低いと判断された場合、病院側が患者から「選定医療費」を最大で約1万3000円徴収する制度を導入します。これは、安易な救急車利用を抑制し、本当に必要な人が適切な医療を受けられる体制を整えるための試みです。

もちろん、「命に関わるような緊急時は迷わず救急車を呼んで下さい」と茨城県は呼びかけています。

まとめ:救急隊員を守るために、私たちができること

救急隊員は、私たちの命を守るために日々危険と隣り合わせで働いています。彼らが安心して職務を全うできるよう、まずは救急車や救急隊員に対する暴力や妨害行為が絶対に許されないということを改めて認識する必要があります。

また、119番通報は、緊急性の高い場合にのみ利用するように心がけましょう。タクシーの代わりや、水道のトラブル相談など、緊急性のない場合は、適切な機関に連絡するよう心がけたいものです。

そして、救急搬送の新制度のように、各自治体の取り組みにも積極的に目を向け、より良い救急医療体制の構築に協力していくことが重要です。

【緊急事態なのに】救急隊員への暴力、救急車破壊が横行…その背景と対策は?

救急隊員への暴力や救急車の破壊は、私たちの命を守るためのシステムを脅かす行為です。一人ひとりが意識を高め、救急隊員が安心して職務を遂行できる社会を目指しましょう。