韓国の高齢者世帯、平均所得は増加傾向も…「平均の罠」に注意が必要?

高齢者世帯の平均所得は上昇、背景にベビーブーム世代の存在

韓国の高齢者世帯の年平均所得が、2022年には約3500万ウォン(約384万円)に達したことが、保健福祉省の調査で明らかになりました。これは、2020年の調査から約442万ウォン増加しており、高齢者世帯の所得増加傾向が鮮明になっています。

韓国の高齢者韓国の高齢者

この背景には、高度経済成長期に生まれ、豊かな資産を築いてきたベビーブーム世代が高齢者層に仲間入りしていることが挙げられます。ベビーブーム世代は、高学歴で高収入の職に就き、不動産などの資産を形成してきた世代です。彼らが高齢者になることで、高齢者全体の所得水準が押し上げられていると考えられます。

世代間格差も… 上の世代ほど所得は減少傾向

しかし、高齢者全体の生活水準が向上しているかというと、そう単純ではありません。調査結果によると、高齢者世帯の所得は、年齢層が上がるにつれて減少する傾向が見られるのです。

2023年の調査では、65~69歳の高齢者世帯の年収は平均4787万ウォンでしたが、70~74歳は3261万ウォン、75~79歳は2768万ウォンと、年齢層が上がるにつれて減少しています。80歳以上の世帯ではさらに所得は低下し、2300万ウォン台となっています。

金融資産も同様の傾向が見られ、65~69歳の世帯では平均5523万ウォンでしたが、90歳以上の世帯では3997万ウォンまで減少しています。

専門家の意見:「平均の罠」に注意が必要

これらの結果から、韓国の高齢者社会は、平均所得の上昇に隠された「平均の罠」が存在していると言えるでしょう。

高齢者支援の専門家であるキム・ヨンチョル氏は、「ベビーブーム世代の高齢化によって、高齢者全体の所得水準は押し上げられているように見える。しかし、高齢者人口全体で見ると、依然として貧困線以下の生活を送る人が多く、世代間格差も拡大している。平均値だけで高齢者社会の実態を捉えることは危険だ」と指摘しています。

まとめ:高齢者社会の課題解決に向けた取り組みが重要に

韓国の高齢化は急速に進んでおり、2025年には高齢者人口が1000万人を突破すると予想されています。高齢者の貧困問題や世代間格差は、韓国社会全体の課題と言えるでしょう。

政府は、高齢者の所得保障や雇用機会の拡大、社会サービスの充実など、高齢化社会に対応するための様々な政策を進めています。しかし、高齢者社会の課題は複雑化しており、一層の取り組みが必要とされています。