韓国経済の現状は、政府の楽観的な見通しとは裏腹に、深刻な停滞を見せています。尹錫悦大統領が「韓国経済は確実に生き返っている」と発言したわずか数ヶ月後、7-9月期の経済成長率はわずか0.1%と、韓国銀行の予想値の5分の1にとどまりました。これにより、政府が掲げる年間成長率目標の達成は困難になり、下方修正も避けられない状況です。
政府の楽観論と現実の乖離
韓国開発研究院(KDI)は11ヶ月にわたり内需不振を指摘してきましたが、企画財政部は「緩やかな内需回復」を主張し続け、大統領の自信に繋がっていたと考えられます。しかし、4-6月期のマイナス成長に続き、7-9月期も低迷した現状は、政府の楽観的な見方が現実を反映していないことを示唆しています。
韓国の経済成長率の推移
見通しの甘さと確証バイアス
専門家の間では、政府が楽観的思考や確証バイアスに陥っていた可能性が指摘されています。元経済長官は「成長率引き下げに何の意味があるのか。対策を出さなくては」と述べ、現状認識の甘さと対策の不足を批判しています。的確な診断なくして、効果的な対策は期待できません。
輸出不振と税収不足の悪循環
政府が期待を寄せていた輸出も、暗雲が立ち込めています。7-9月期の輸出は減少に転じ、10月も低迷が続いています。中国経済の減速や半導体市場の低迷など、輸出を取り巻く環境は厳しさを増しています。
韓国の輸出入の推移
経済の低迷は税収不足にも直結し、財政運営に大きな影を落としています。にもかかわらず、与党は金融投資所得税の廃止や油類税の引き下げに固執しており、経済の不安定化に拍車をかけています。
潜在成長率の低下:構造的な問題点
さらに深刻なのは、経済の基礎体力である潜在成長率の低下です。OECDの推計によれば、韓国の潜在成長率は米国に追い抜かれ、少子高齢化の影響も指摘されています。
人材流出と富の流出
しかし、問題は人口減少だけではありません。優秀な人材や富裕層の海外流出が加速しており、韓国経済の活力を奪っています。昨年は多くの高度人材が米国に渡り、今年も多数の富裕層が韓国を離れると予想されています。人材と富の流出は、生産性向上への大きな阻害要因となっています。
韓国の人材流出の現状
経済システムへの信頼低下
金融業界の現状も、経済システムへの信頼を揺るがしています。都市銀行は過去最高の利益を記録していますが、その多くは利子収益によるものです。金融当局の政策により、預金金利は低く抑えられ、貸出金利だけが上昇した結果、預金者と借入者が犠牲になり、銀行だけが利益を独占している状況です。このような不均衡な状態は、国民の経済意欲を冷え込ませる要因となっています。
活力ある経済への道:改革の必要性
エコノミスト誌は、米国経済の好調の要因として、広大な市場、低い規制、優秀な大学、法治主義などを挙げています。また、活発な企業活動と流動的な労働市場も、競争力強化に貢献しています。
韓国経済の停滞は、避けられないものではありません。必要な改革を断行し、構造的な問題点に対処することで、再び活気を取り戻すことが可能です。政府は現状を直視し、抜本的な改革に着手する必要があります。