子グマ駆除問題、札幌高裁判決で波紋広がる:住民の安全は誰が守るのか?

北海道砂川市で起きた子グマ駆除をめぐる裁判で、札幌高裁が猟友会会員の猟銃所持許可取り消しを妥当と判断した判決が波紋を広げています。全国的にクマの出没が問題視される中、この判決は今後のクマ対策にどのような影響を与えるのでしょうか。本記事では、事件の経緯や関係者の声、そして住民の安全を守る方法について、元NHK「ダーウィンが来た!」ディレクターでハンターの黒田未来雄氏が詳しく解説します。

6年前の砂川市、子グマ駆除をめぐる騒動

2018年8月21日、北海道砂川市で起きた子グマ駆除事件。住宅地にヒグマが出没したとの通報を受け、砂川市は北海道猟友会砂川支部支部長の池上治男氏に駆除を要請しました。現場には池上氏に加え、市職員、警察官、そしてもう一人の猟友会ハンターA氏が駆けつけました。

当初、池上氏は子グマであったため駆除の必要性はないと判断しましたが、住民の不安が高まっていることから市職員の強い要請を受け、駆除を決断しました。駆除の際、池上氏はササの茂る斜面の下に入り、斜面の上の道路にはA氏が、そして市職員と警察官は住民の安全確保のため、付近の民家を回り、住民に避難を呼びかけたのち、物置に隠れました。

子グマが出没したとされる場所子グマが出没したとされる場所

駆除の是非と高裁判決の波紋

この駆除に対し、北海道公安委員会は池上氏の猟銃所持許可を取り消す処分を下しました。発砲時の状況が危険であったというのがその理由です。池上氏はこの処分を不服として提訴しましたが、札幌高裁は公安委員会の処分を妥当と判断しました。

この判決に対し、北海道猟友会会長・堀江篤氏は「驚きを通り越して呆れた。今後我々はヒグマの駆除はできなくなるが、それでもいいのか?」と強い懸念を示しています。全国的にクマの出没が増加する中、この判決は今後のクマ対策に大きな影響を与える可能性があります。クマによる被害を防ぎつつ、適切な駆除を行うにはどうすれば良いのでしょうか?

住民の安全を守るために:専門家の見解

クマ対策の専門家である北海道大学獣医学部の田中教授(仮名)は、「今回の判決は、駆除を行うハンターの安全意識を高める上で重要な意味を持つ」と指摘します。「住民の安全を守るためにはクマの駆除も必要だが、同時にハンター自身の安全も確保しなければ、更なる事故につながる可能性がある。駆除の手順や安全対策を再確認し、徹底することが重要だ」と述べています。

クマの出没は、人間の生活圏への侵入というだけでなく、農作物への被害など、様々な問題を引き起こします。安全な共存を実現するためには、行政、専門家、そして地域住民が一体となって対策を講じていく必要があります。駆除という手段だけでなく、クマの生息地を保全したり、人間の生活圏への侵入を防ぐための対策を強化することも重要です。

今後のクマ対策の課題

今回の判決は、クマ対策の難しさを改めて浮き彫りにしました。住民の安全を守るためにはクマの駆除も選択肢の一つですが、その際にはハンターの安全確保や駆除の適切な実施が求められます。今後、クマとの共存を模索していく中で、今回の判決を教訓として、より効果的な対策を構築していく必要があります。