性暴力は決して許される行為ではありません。被害者の服装は全く関係ない、という力強いメッセージを掲げる「そのとき、あなたは、何を着てた?~What Were You Wearing?~」展が、男女共同参画センター横浜(横浜市戸塚区)で開催されています。本記事では、展示の内容と、性暴力撲滅に向けた取り組みについて深く掘り下げていきます。
性暴力被害者の声なき声を形に:展示の概要
alt横浜で開催されている「そのとき、あなたは、何を着てた?」展では、性暴力被害者の証言に基づき再現された、被害時の服装が展示されています。青いニットにジーンズ、紺のセーラー服など、日常的な服装が並ぶ光景は、性暴力の被害が誰にでも起こりうる現実を突きつけます。
被害者の心に寄り添う:証言と展示物
展示されている服装の傍らには、被害当時の状況や心情を綴った説明書きが添えられています。例えば、白いブラウスは、肉親からのレイプ被害に遭った女性のものです。「被害の10年後に、忘れようとしていた記憶がよみがえってしまった時からショックが大きくなっていった」という痛ましい言葉は、性暴力の傷の深さを物語っています。痴漢やセクハラなど、様々な性暴力被害の怒りや苦しみが、静かに、しかし力強く訴えかけられています。
世界的なムーブメント:展示の起源と意義
この展示は、米国の倫理学者メリー・シマリングさんの詩「私が着ていたもの(What I Was Wearing)」に着想を得て、2014年にアーカンソー大学の研究者らが開催したアート展が起源です。米国のみならずヨーロッパなど世界中で開催され、性暴力に対する意識改革を促すムーブメントとなっています。
日本の現状と課題:専門家の見解
日本では昨年、上智大学で初めて開催されました。企画者の一人である上智大学の田中雅子教授(国際協力、ジェンダー論)は、「服装に対する指摘は、被害が本人のせいにされがちだということの象徴だ」と指摘しています。
例えば、ハラスメント研修などで「露出の多い服装をやめましょう」といった助言がいまだに行われている現状があります。このような発言は、被害者に「自分が悪かった」という自責の念を抱かせ、誰にも相談できない状況を生み出してしまいます。
男女共同参画センター横浜:性暴力撲滅への取り組み
上智大学の展示に触発され、展示の貸し出しに応じたのが男女共同参画センター横浜です。同センターには、DVや性暴力に関する相談が寄せられています。白藤香織館長は、「性被害に遭った人を、夜道を歩いていたからでは? 肌を露出する服を着ていたからでは? と非難する風潮がある」と説明し、「どんな対策をしても被害に遭ってしまうことはある。責めるのはおかしいと伝えたい」と強調しています。
展示を通して考える:性暴力のない社会を目指して
展示を担当した金子順子さんは、「展示は胸に迫ってくるものがあり、小さい会場だが、圧倒されると思う。共感し、考えることにつながってほしい」と語っています。性暴力は決して他人事ではありません。この展示を通して、性暴力の現状や被害者の苦しみに目を向け、性暴力のない社会の実現に向けて、私たち一人ひとりができることを考えてみませんか。
今後の開催予定
東京や埼玉でも開催が予定されています。詳細はFacebookページ(https://www.facebook.com/16days2014/)でご確認ください。