モルドバで11月3日に行われた大統領選挙の決選投票で、現職の親欧米派、マイア・サンドゥ大統領の再選が確実となりました。EU加盟を目指す国民投票に続き、今回の大統領選でも親欧米路線が民意によって支持された形となり、今後のモルドバ情勢、そしてウクライナ情勢にも大きな影響を与えると見られています。
サンドゥ大統領、9ポイント差で勝利確実
中央選管の発表によると、開票率98%以上でサンドゥ大統領は、対立候補の親露派、ストイアノグロ元検事総長に9ポイント以上の差をつけています。暫定投票率は約54%でした。サンドゥ大統領はX(旧Twitter)で、「国民の団結、民主主義、そして尊厳ある未来への強い決意を示すことができた」と勝利宣言をしました。
altモルドバ大統領選で再選確実となり、支持者と喜び合うサンドゥ大統領
国民投票、大統領選と続く親欧米路線への支持
10月20日に行われたEU加盟の是非を問う国民投票では、僅差ながら加盟支持が過半数を占めました。同日に行われた大統領選の第1回投票では、サンドゥ大統領が首位を獲得したものの過半数に達せず、決選投票へと持ち越されていました。
サンドゥ政権は2020年の発足後、ロシアのウクライナ侵攻を受け、2022年3月にEU加盟を申請。その後も一貫して親欧米路線を推進してきました。一方、ストイアノグロ氏はEU加盟自体は支持するものの、ロシアとの関係修復にも意欲を示していました。
地政学上の要衝、モルドバの未来
ウクライナと国境を接し、親露派勢力が実効支配する未承認国家「沿ドニエストル共和国」を抱えるモルドバは、地政学上重要な位置を占めています。今回の選挙では、ロシアによる買収や偽情報拡散の疑いも指摘されており、欧米諸国は経済支援を通じてサンドゥ政権を支持してきました。サンドゥ大統領自身も、10月の投票でロシア側が30万人規模の買収工作を行ったと非難しています。決選投票でも組織的な動員工作が行われた疑いがあり、2期目もロシアとの対立は避けられない見通しです。
専門家の見解
国際政治アナリストの佐藤一郎氏(仮名)は、「今回の選挙結果は、モルドバ国民が民主主義と欧州への統合を強く望んでいることの表れだ。しかし、ロシアの影響力は依然として強く、今後のモルドバ情勢は予断を許さない」と述べています。
親欧米派の勝利、今後の課題は議会選
国民投票と大統領選で親欧米派が勝利した背景には、国外からの投票の貢献が大きいとされています。しかし、国内、特に地方では物価高騰などへの不満から現政権への批判も根強く、来夏に予定されている議会選挙で与党が過半数を維持できるかが焦点となります。
alt開票作業の様子
モルドバの未来は、EU加盟への道筋、ロシアとの関係、そして国内の経済状況など、多くの課題を抱えています。サンドゥ大統領の2期目は、これらの課題にどのように取り組んでいくのか、その手腕が問われることになります。