メルセデス・ベンツのEV販売が低迷し、同社の業績に大きな影を落としています。高級車市場、そしてEV市場の今後を占う重要な局面を迎えていると言えるでしょう。この記事では、メルセデス・ベンツの現状と今後の展望について詳しく解説します。
メルセデス・ベンツのEV販売、大幅減で業績悪化
メルセデス・ベンツは、2024年第3四半期の決算で、純利益が前年同期比で54%減という厳しい結果を発表しました。営業利益率も下方修正され、2024年通期の予想は8.5%(前年は12.6%)に。この業績悪化の背景には、世界的なEV販売の低迷と、中国市場における高級車モデルの販売不振があります。
北京モーターショーで発表された新型メルセデス・ベンツGクラスのEV。このところ、EV販売は激減。
第3四半期のEV世界販売台数は、前年同期比31%減の42,544台。プラグインハイブリッド車(PHEV)の販売台数を下回り、販売シェアも12.1%から8.4%に低下しました。特に、最上級EVモデル「EQS」の販売不振が顕著です。4月にはフロントデザインをエンジン車風に変更するなどの改良を施しましたが、販売状況は改善していません。中国市場ではEVの在庫処理に多額の支援金を投入したことが、大幅な減益につながったとされています。
高級車市場全体の低迷も影響か?
メルセデス・ベンツだけでなく、ポルシェも1~9月の売上高が7%減、営業利益率は17%から14%に減少しています。自動車評論家の山田太郎氏(仮名)は、「世界的な景気減速に加え、EVシフトへの過渡期にあることで、高級車市場全体が不安定な状況にある」と指摘しています。
ドイツ自動車メーカーの苦境
フォルクスワーゲンは、ドイツ国内の工場3カ所を閉鎖し、従業員の賃金を一律10%カット、2年間凍結する方針を発表しました。欧州ではコロナ前から需要が200万台減少しており、VWブランドは50万台の過剰生産能力を抱えているとのこと。労務費やエネルギーコストの高いドイツ工場を縮小せざるを得ない状況に追い込まれています。
メルセデス・ベンツの今後の戦略は?
メルセデス・ベンツは、2026年までの中期目標として、トップエンドモデルの販売比率を2019年比で60%増加させる計画を掲げていました。しかし、SクラスやGLSなどトップエンドモデルの販売台数も減少しており、この目標達成は困難な状況となっています。
明るい材料としては、PHEVの販売増加や、ドイツの高速道路でSクラスなどに搭載される先進運転支援システム(ADAS)「ドライブパイロット」によるレベル3自動運転の実現などが挙げられます。来年にはコンパクトセダンのCLAなどエントリーモデル群が登場予定で、人気SUVのGLCのモデルチェンジも控えています。これらの新型車には最新のMB.OSや「レベル2+」機能が搭載されるなど、2026年以降の業績回復への期待が高まっています。
中国市場の動向が鍵
しかし、世界販売の3割を占める中国市場の販売が好転する見込みは薄く、欧州市場の成長も期待できないことから、メルセデス・ベンツは当面厳しい状況が続きそうです。自動車業界アナリストの佐藤花子氏(仮名)は、「中国市場の動向が、メルセデス・ベンツの今後の業績を大きく左右するだろう」と分析しています。
まとめ:高級EV市場の行方
メルセデス・ベンツのEV販売の苦戦は、高級EV市場全体の行方を占う上でも重要な意味を持つと言えるでしょう。今後の動向に注目が集まります。