タリーズが病院出店に込めた「亡き弟の願い」 創業者の投稿に反響、企業も明かす狙い

コーヒーチェーン「タリーズコーヒー」の運営会社を創業し、元参院議員としても知られる松田公太氏のX投稿が注目を集めている。投稿は、初めて病院に出店できた当時を振り返るもので、病院で亡くなった松田氏の弟の「願い」があったことを明かした。タリーズは現在も多くの病院に出店しており、その背景にある創業者の個人的な思いと、運営会社のホスピタリティ追求という事業戦略が交錯している。

詳細:創業者のX投稿とその反響

注目を集めたのは、松田氏が2024年6月29日に行ったX投稿だ。病院内のタリーズコーヒー店舗への感謝を示す投稿に反応し、松田氏が自らの経験を語ったものだ。

松田氏の投稿によれば、多くの病院にコーヒーチェーンの出店を断られたが、東京大学医学部附属病院(東京都文京区)だけが承諾してくれたという。その背景には、個人的な辛い経験があったことを明かしている。

タリーズコーヒー創業者、松田公太氏のX投稿。病院での出店経緯と亡き弟への思いを綴っている。タリーズコーヒー創業者、松田公太氏のX投稿。病院での出店経緯と亡き弟への思いを綴っている。

彼は、「33年前に病院で楽しいことが一つもなく死んでいった弟(当時21歳)の願いが叶えられた瞬間でした」と綴った。東大病院への出店が、弟の生前の願いを実現する一歩だったという。この投稿は6月30日までに約10万件の「いいね!」を集めるなど大きな反響を呼んだ。松田氏はその反響を受け、「これだけ多くの人に病院店舗を憩いの場として使って頂いていることを知り、胸が一杯。弟も喜んでくれているはずです」と改めて感謝の思いを表明した。

タリーズコーヒージャパンが語る病院出店の現在と目的

この件について、タリーズコーヒージャパン(東京都新宿区)の広報グループは取材に対し、病院内店舗の運営に関する狙いを具体的に語った。

広報は、「ホスピタリティを追求した店舗形態の位置づけとして患者さんやお見舞いの方々、職員の皆様がホッと一息つけるような憩い場所を提供したいという思いで、現在も出店展開をしております」と説明。病院という特殊な環境下において、コーヒーを提供するだけでなく、心の安らぎやリフレッシュできる空間を提供することを目指しているという。

病院内のタリーズコーヒー店舗の様子。患者や家族、医療従事者が利用できる憩いの空間。病院内のタリーズコーヒー店舗の様子。患者や家族、医療従事者が利用できる憩いの空間。

現在、タリーズコーヒーの全店舗数の約10%にあたる95店舗が病院内に展開されている。初めての病院内店舗は、2004年4月27日にオープンした東大病院1階の「タリーズコーヒー 好仁会東大病院店」であった。その後、日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)や東京医科大学病院(東京都新宿区)など、全国の主要な医療機関にネットワークを広げている。

初めて病院に出店した経緯については、創業者の強い思いに加え、当時の市場状況も要因であったことを振り返る。2004年当時、病院内に喫茶店は多く見られたが、本格的なカフェはほとんど存在しなかったという。しかし、病院を利用する患者、見舞い客、そして病院で働く職員の間には、カフェのニーズが存在すると考えられた。同社の経営理念の一つである「地域社会に根ざしたコミュニティーカフェとなる」を体現する場として、病院への出店は意義深いと判断されたのである。

利用者からの感謝の声と今後の展望

今回の松田氏の投稿への大きな反響は、多くの利用者が病院内のタリーズに価値を見出していることの証左と言える。タリーズコーヒージャパンにも、実際に病院内店舗を利用した人々から感謝の声が多数寄せられている。

入院中の患者からは、「タリーズがあるから、お見舞いに来てくれた人と一緒にお茶できてよかった」といった、交流の場としての価値を挙げる声がある。また、病院で働くスタッフに顔を覚えてもらい、「入院中いつも利用していたら、スタッフが顔を覚えてくれてうれしかった」といった、日々の利用を通じた温かいエピソードが手紙で寄せられることもあるという。これらの声は、単なる飲食スペースとしてだけでなく、精神的な支えや小さな喜びを提供する場としての病院内タリーズの役割を示唆している。

タリーズコーヒージャパンの広報は、今後の病院出店に関する方針について、「今後も患者さんや医療スタッフの皆さまにほっとできる空間を提供できるように、いろんな病院様とご一緒させていただけたらうれしく思います」と述べており、病院という空間におけるホスピタリティの提供を継続していく意向を示している。

結論

タリーズコーヒーが病院内に積極的に出店している背景には、創業者の松田公太氏の亡き弟への個人的な追悼と願い、そしてタリーズコーヒージャパンの「地域社会に根ざしたコミュニティーカフェ」として、病院という特別な場所で人々に安らぎを提供するという明確な企業理念がある。これらの店舗は、多くの利用者にとって単なるコーヒーショップ以上の、心の拠り所となっていることが、利用者からの声や創業者の投稿への反響から明らかである。今後も、タリーズの病院内店舗は、医療空間におけるホスピタリティの提供という独自の価値を提供し続けるだろう。


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