九州地方を中心にディスカウント店を展開するトライアルホールディングス(HD)は2日、大手スーパー西友の買収を完了したと発表した。今後はトライアルHDの強みであるデジタル技術を西友の事業に導入し立て直しを図るほか、首都圏への出店強化を目指す。これにより、両社合わせた売上高はコンビニエンスストア大手やスーパー大手などを上回る規模となる。
買収完了とその規模
買収完了は1日付で行われた。トライアルHDは、米投資ファンドKKRと米ウォルマートから西友の発行済み株式すべてを取得し、完全子会社化した。今回の買収による連結売上高は単純合算で約1兆2000億円に達し、コンビニ大手のローソンやスーパー大手のライフコーポレーションを上回る規模となる。
主な小売企業の売上高比較(トライアルHD・西友買収後)
新体制とトライアルの強み
トライアルHDは2日、西友の社長だった大久保恒夫氏が西友副会長に就き、後任としてトライアルの子会社で会長を務める楢木野仁司氏が西友の新社長に就任する人事を発表した。トライアルHDの社長である永田洋幸氏は、西友の会長も兼任することとなった。トライアルHDは、デジタル技術を活用した効率的な店舗運営に強みを持っており、5月末時点で全国に348店舗を展開している。しかし、これまで東京都内には店舗がなく、首都圏における出店の足がかりを模索していた。
西友の新旧社長・副会長(楢木野氏と大久保氏)
西友の現状と戦略的意義
一方、西友は6月26日時点で全国に245店舗を展開しており、そのうち75店舗が東京都内にある。かつてはセゾングループの中核企業だったが、激化する価格競争などにより苦戦が続き、KKRの傘下に入っていた。今回のトライアルHDによる買収に際しては、流通大手のイオンや、「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)なども買収候補として名乗りを上げていた。
今後の展開と期待
トライアルHDは今後も西友の店舗を存続させ、自社の得意とするデジタル技術を順次導入していく方針だ。特に、惣菜などの調理施設を持たず、既存店から商品を配送する小型スーパー「トライアルGO」を年内にも関東圏で展開開始する計画がある。また、今秋からはトライアルの店舗でも西友のプライベートブランド商品を販売するなど、商品の相互供給も進める。両社の惣菜生産拠点や物流拠点の統合なども視野に入れている。2日に都内で開かれた記者会見で、西友新社長に就いた楢木野氏は、「西友と一緒になることで、トライアルHDがこれまで苦手としてきた小型店や都心部への出店に道筋を立てられる」と述べた。西友副会長に就いた大久保氏は、「商品力や販売力がさらに強化される」と期待を表明した。大手スーパーの関係者からは、「好立地の店舗網を持つ西友にディスカウントストアのノウハウが加われば、手ごわい競争相手になるだろう」との見方が出ている。
トライアルHDが展開する小型店「トライアルGO」(福岡市)
トライアルホールディングスの概要
トライアルホールディングスは、1974年に福岡市で古物商として創業した。1992年には福岡県大野城市にディスカウント店の1号店を開業。福岡県宮若市には、取引先のメーカーや卸売業者と共に市場分析などを行う研究開発拠点を設けている。東京証券取引所グロース市場に上場している。
結論
トライアルホールディングスによる西友の買収完了は、日本の小売業界における勢力図を塗り替える可能性を秘めている。トライアルHDのデジタル技術と西友の都市型店舗網が融合することで、新たなビジネスモデルが構築され、首都圏におけるトライアルHDのプレゼンスが飛躍的に向上する見込みだ。この動きは、価格競争が激化するスーパーマーケット業界において、他の競争相手にも大きな影響を与えるだろう。