アメリカ大統領選挙の投票日が目前に迫り、有権者たちの不安やストレスはピークに達している。劇的に異なる未来像を掲げる二人の候補者、ハリス副大統領とトランプ前大統領。どちらが勝利するのか、そしてその結果がもたらすであろう変化への不安から、人々はそれぞれの方法で「自己防衛」を試みている。
選挙結果への不安、様々な形で現れる
ペンシルベニア州ベルビューに住むダニエル・トレニーさん(39)は、不安の高まりからクリスマスツリーを例年より早く設置した。ピッツバーグ郊外にあるベルビューは、両陣営が激しく争う激戦区。期日前投票でハリス氏に投票したトレニーさんは、「この不安をどうにか鎮めたい。本当にどうなるのか…」と語る。
一方、トランプ氏に投票する予定のジェニファー・ビュネックさん(68)は、選挙前の緊張感、世論調査会社からの電話、そして溢れかえる選挙広告にうんざりしている。彼女は土曜日の大半を菓子のレシピ本を読むことで過ごし、心の平穏を保とうとした。「政治に熱狂したことは一度もない」とビュネックさんは静かに語った。
altペンシルベニア州ベルビューで、菓子のレシピ本を読みながら過ごすジェニファー・ビュネックさん。大統領選を目前に控えた緊張感から逃れようとしている。(2024年11月2日 ロイター/Gram Slattery)
ロイター通信の取材によると、激戦州に住む有権者たちは、支持候補の敗北、対立陣営による混乱、そして政治的分断のさらなる深まりといった不安に苛まれている。
ヨガ、水泳、読書…様々な「自己防衛策」
人々はそれぞれの方法で不安に対処しようとしている。宗教に救いを求める人、ヨガや水泳、ジム通いなどで体を動かす人、ニュースをくまなくチェックする人、逆に情報から距離を置き読書や散歩に没頭する人など、様々だ。
ジョージア州マリエッタのリン・ニコルソンさん(72)は、ハリス氏に投票した後もスマホに届く大量の政治広告に辟易し、散歩やガーデニング、写真撮影に時間を費やしている。
ジョージア州カントンのトッド・ハリソンさん(49)は、トランプ氏支持だが、政治広告だらけのテレビ観戦をやめた。「選挙が近づくにつれて頭がおかしくなりそうだ」と彼は漏らした。
投票後の混乱への懸念
多くの有権者が懸念しているのは、投票後の混乱、特にトランプ氏が敗北した場合の事態だ。訴訟の乱発、デモや暴力の発生といった可能性が不安を掻き立てる。
ミシガン州デトロイトのハリス氏支持者、シェリー・ゲイダグノゴさん(57)は、トランプ氏の扇動的な言動が暴力の火種になると危惧している。
一方で、ノースカロライナ州ヘンダーソンビルのトランプ氏支持者、リリアン・ホールさん(68)は、ハリス氏敗北の場合の暴動を恐れている。
ロイター/イプソス調査によると、2020年の選挙後のような混乱が再発する可能性を懸念する有権者は全体の74%に上る。
選挙活動への参加で不安を払拭
不安を払拭するために、支持候補の選挙運動に参加する有権者もいる。アリゾナ州タスカンのシャーリー・イーストンさん(85)は、ハリス氏への投票を呼びかける活動に精を出している。
ニューヨークのマーケティング専門家、リサ・フィールズさん(60)は、トランプ氏支持のためフィラデルフィア郊外まで足を運び、戸別訪問を行った。彼女は選挙後、アメリカが再び団結することを願っている。
「食と政治」の専門家、山田一郎氏(仮名)は、「今回の大統領選は、有権者にとって大きなストレスとなっている。人々はそれぞれの方法でこの状況に対処しようとしているが、社会全体の不安を解消するためには、選挙後の融和が不可欠だ」と指摘する。